米F35B戦闘機が発着訓練、沖縄本島沖の強襲揚陸艦で
[米揚陸艦ワスプ(西太平洋) 23日 ロイター] – 米軍は23日、最新鋭のステルス戦闘機「F35B」を、強襲揚陸艦「ワスプ」上で運用する様子を初めて報道陣に公開した。洋上に浮かぶ艦艇を発着拠点とすることで、F35Bは行動範囲が拡大。西太平洋から中東にかけた不安定な地域に、レーダーに映りにくい第5世代戦闘機が機動的に展開可能となる。
「F35B、帰還。第7発着ポイントに着艦する」──。沖縄本島の東方沖に展開するワスプ艦上にアナウンスが流れると、灰色の機体がジェットエンジンの轟音とともにゆっくり後方から進入してきた。甲板上に7と番号が描かれた地点の上で機体はしばらく静止、垂直に高度を下げながら、最後はストンと着陸した。
F35Bは、A・B・Cの3タイプあるF35戦闘機の1つ。短距離滑走で離陸、さらに垂直での離着陸が可能で、強襲揚陸艦のような小さめの甲板上や、短い滑走路で運用ができる。
米軍は今年3月、海兵隊岩国基地(山口県岩国市)所属のF35Bを海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)のワスプに合流させ、世界で初めて強襲揚陸艦での運用を開始した。
「歴史的な配備だ。F35Bと強襲揚陸艦を組み合わせることで、われわれの戦闘能力は大きく向上する」と、米海軍第7遠征打撃群のブラッド・クーパー司令官は艦上で記者団に語った。「この地域の平和と安定を維持するために必要な能力が強化される」と述べた。
陸上の基地に配備するF35Aは行動範囲が限られ、F35Cは巨大な空母で運用するため機動力が劣る。災害救援から戦闘まで、あらゆる事態に即時に対応するのが任務の強襲揚陸艦から発着可能なF35Bであれば、西太平洋から中東まで、広い範囲に素早く展開できる。
「ステルス性を生かして北朝鮮や中国の奥深くまで入り、衛星では捉えきれない対空ミサイルや弾道ミサイルの移動式発射台などを見つけることができる」と、海上自衛隊の元一佐で、現在は笹川平和財団上席研究員の小原凡司氏は言う。「自分で破壊することもできるし、位置情報を(他の部隊と)共有して巡航ミサイルを撃たせることもできる」と話す。
米海兵隊の岩国基地は昨年11月、16機のF35Bの配備を完了。米海軍は今年1月、F35Bを運用できるよう改修したワスプを佐世保基地に配備した。4月1日から始まる米韓合同軍事演習にワスプが参加するとの一部報道があるが、米軍は「運用に関わることは一切答えられない」(米海兵隊のエド・トンプソン大尉)としている。
日本政府など複数の関係者によると、自衛隊もF35Bの取得を検討している。現在はヘリコプターを運用している「いずも」型護衛艦を改修し、F35Bを搭載する構想がある。
南西諸島唯一の軍用滑走路である那覇基地(沖縄県那覇市)が使えなくなった場合でも、離島の短い滑走路や、洋上の艦艇で運用できるF35Bで制空権を失わないようにする。
日本政府は、2019年4月から始まる5カ年の中期防衛力整備計画でF35Bの取得を始めたい考え。関係者の1人は、「2個飛行隊ないと戦力にならない」としており、20機以上のF35Bを取得する可能性があると指摘する。
(久保信博 編集:田巻一彦)