美食秘話

居酒屋店主のひらめきから生まれた焼売

薄皮に具を包んで蒸し上げる焼売は、日本でも広く愛されている点心の一つです。その起源は約700年も前の元王朝にあると言われています。ある店主の機転で生まれたそうです。

 

当時あまり景気の良くない居酒屋があり、店の主人は毎日売れ残った肉や白飯の処理に困っていました。ある日、主人は突然斬新なアイディアを思いつきました。それはひき肉とご飯を混ぜ合わせた具に醤油などで味付けをし、餃子の皮で包み蒸し上げるというものでした。しかし具の量に対して餃子の皮が足りなかったため完全に包むことができず、今までにない料理となりました。出来上がったものを試食すると、格別なおいしさだったそうです。

 

主人は店員を呼んで売りに行かせようとしました。しかしまだ名前を考えていなかったため、店員はどうやって売り歩けばよいのか戸惑いました。「これはなんですか?餃子に似てなければ、饅頭にも似てない。しかも上には口が開いている。これを何と呼んで売ればいいでしょうか?」店主は自分の創作料理を見て、適当に「これは……『焼きあがったら売るもの』だ……」と言いました。店員はそれを「焼いて売るもの」と思い込み、「焼売!焼売!おいしい焼売、1つ5銭!」と大きな声で客を呼び寄せました。

 

通行人はその珍しい外形に引きつけられ、ひとたび味見した者はそのおいしさの虜になってしまいました。「焼売」の人気は次第に広がり、庶民の間で定着しました。

 

数百年の時間を経て、焼売は中国各地に伝播し、地域の特産物を使った「ご当地焼売」が数多く考案されました。その多くは具材にちなんだ名前が付けられます。例えば、安徽ではもち米とアヒル肉を具にした「鴨油焼売」が、江西では卵と豚肉を使った「蛋肉焼売」が作られています。また、山東省臨清では華北地方の食習慣を反映した「羊肉焼売」も有名です。

 

居酒屋の主人が無意識の内に作った焼売は自身の危機を救っただけではなく、今日まで続く名物料理となりました。

(翻訳編集・貝真悟)