松花皮蛋(ピータン)の由来

中国料理の前菜に付き物の「ピータン」は、中国名を「松花皮蛋」といいます。水晶のように透き通った碧緑色の卵白部分に、松の花の模様があることからこの名が付きました。ピータンは、美味なだけでなく、栄養効果と薬用効果もあります。栄養効果は一般の卵とあまり変わらないものの、石灰に漬けることによって消化吸収が容易になり、コレステロールも少なくなります。薬用効果としては、漢方理論によると、ピータンは涼性で熱を冷まし、胃腸炎、歯痛、耳鳴り、めまい、高血圧等に効くといいます。

ピータンは、透き通った碧緑色の卵白部分に松の花の模様があります。 (Glucose / PIXTA)

ピータンの由来については、興味深い伝説があります。明朝の天啓年間、浙江省の湖州一帯で大飢饉があり、民衆の生活が行き詰まっていました。当時の湖州知事は、倉を開いて食糧を払い下げましたが、土地の豪族たちは私利のために、「大衆を救うという美名で、その実汚職をしている」として、知事を上級機関に告訴します。知事は逮捕されて投獄されました。豪族たちは、獄卒たちと内通しており、毎日知事に与えるべき食事は、すべて獄卒たちにこっそり食べられてしまったため、知事は餓死しそうになりました。

 ある日、「陳」という百姓が、鴨の巣を掃除しているとき、鴨の糞と柴の灰の中から、十数個の変色した卵を見つけました。洗って殻を剥いてみると、多少独特な匂いが鼻をつくが、試食してみると非常に美味しかったのです。陳さんは、この鴨の卵を牢獄にいる知事に持って行きました。獄卒たちは、この種のものを食べたことがなく、それが何なのかも知らず、おまけに匂いが鼻につくので、それをそのまま知事に与えました。飢えて瀕死の状態にいた知事は、その変わった鴨の卵を食べて一命を取り留めたのです。それからしばらくして、上級機関の取調べによって、汚職の事実がなかったことが分かり、知事は官職に復帰しました。

その後、この知事は、卵を送ってくれた陳さんを招き、当時の条件を真似て作り方を研究し、同様な卵を作ることに成功しました。それゆえ、この卵を「陳蛋」と名付けました。現在は表面の模様にちなんで、「松花皮蛋」と呼ばれています。