金委員長が再訪中 中国「北朝鮮カード」を再発動か
中国政府系メディアは8日、習近平国家主席が7~8日にかけて、遼寧省大連市で北朝鮮の金正恩労働党委員長と会見したと報道した。金委員長の訪中は3月末に続き、40日ぶりの2回目。中朝要人が頻繁に会う背景には、中国当局が抱える米中通商問題があるほか、朝鮮半島の非核化をめぐる中国側の孤立化を回避する思惑があるとみられる。
中国側の報道によると、習主席は会談中、中朝関係について「重要な戦略的意義がある」とした上、今後中朝双方は「戦略的意思疎通を強化する必要がある」と述べた。また、習氏は今月末に予定されている米朝首脳会談について、改めて支持することを示した。
一方、金委員長は習主席に対して朝鮮半島の非核化に向けた中国側の長期間の取り組みに感謝したという。
中国側は、共産党中央政治局常務委員の王滬寧氏、中央政治局委員の楊潔篪氏、王毅・外相などの要人が出席。朝鮮側は、李洙墉・国防部長、李勇浩外相、金正恩氏の妹、金正与・宣伝煽動部第1副部長などの高官が同席した。
中国政府系メディアは、中朝双方は両国が共通する「社会主義である」ことを確認し強調した、と報じた。
米朝首脳会談を控え、中朝高層が頻繁に会談
習近平国家主席が大連で金正恩委員長と会談する3日前、中国の王毅外相が訪朝を終えたばかり。また、王外相の訪朝に先立ち、党対外連絡部の宋涛部長も4月中旬、北朝鮮を訪れた。8日の中朝首脳会談に向けて、双方が日程の調整を行ったとみられる。
一方、王毅外相が訪朝後、北朝鮮は突如、米国批判に転じた。北朝鮮政府系メディアは6日、「米国が制裁などの圧力で非核化合意が実現したと強調するのは世間を誤解させる」と非難した。
王毅外相は訪朝の際、史上初の米朝首脳会談に臨む金正恩委員長について、「情勢に即した大胆な決断だ。朝鮮半島情勢に積極的な変化をもたらした」と称賛した。
中国国内の一部の学者は、王外相がトランプ米政権ではなく、金政権の働きで半島情勢が好転したと印象付ける狙いがあったと分析した。
学者らは、短期間に中朝双方の指導部が頻繁に意見交換を行う背景には、米中間の貿易摩擦があると推測する。今月初めに開催された米中通商交渉では、米中は、貿易不均衡や知的財産権侵害などで溝を埋められず、今後米側が対中貿易制裁を実施していくと予測される。このため、中国側が、再び「北朝鮮カード」を発動させ、米国をけん制していく意図がある。中国当局は、その見返りに北朝鮮に対して、引き続き経済援助と軍事的支援を行う。
半島問題をめぐって国際社会での孤立化を防ぐことも、中国当局が「北朝鮮カード」の再発動を決めた要因だと指摘する専門家がいる。
韓国の文在寅大統領と金正恩委員長が4月末に行った会談を通じて、朝鮮半島の完全な非核化は、中国除外の「北朝鮮・韓国・米国」の3カ国で実現できるとの見方が、中国を含む各国で広がっていた。国際情勢に詳しい香港の学者、林和立氏は米メディア・ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、「半島問題で主導権を握りたい中国当局にとって不都合であろう」と述べた。
また、台湾国立金門大学の盧政鋒教授はRFAに対して、中国当局は、米国が北朝鮮を引き込むことを警戒していると指摘した。
盧氏は、中国側は「北朝鮮が本当に非核化するのかを確認したいのだろう」「米朝の急接近にはかなり不安だ」とした。
(翻訳編集・張哲)