(Epoch Times Uplift/Courtesy of Judy Klym)

「犬が救ってくれた」人間性を取り戻した元囚人

相手のために尽くし、社会に貢献すること。その相手は家族でも他人でも、また動物や環境でもいいのです。家庭環境に恵まれず、人生の半分を刑務所で過ごした男性が、の世話を通して長く失っていた人間性(humanity)を取り戻しました。

 

複雑な家庭

 

米国フロリダ州で生まれたジェイソン・バートランド(Jason Bertrand)さんの幼少期は過酷でした。ジェイソンさんが生まれた時、彼の父親と母親はそれぞれ17歳と15歳。二人ともドラッグや暴力が日常という家庭出身で、母親はその後、ジェイソンさんが6歳の時に子供三人を残して蒸発してしまいました。一方、深刻なドラッグ中毒者だったジェイソンさんの父親はネグレクト(育児放棄)の末、刑務所に収監されました。

 

周囲に手本となる大人がおらず、善悪の基準も分からないまま非行に走ってしまったジェイソンさん。19歳の時に強盗で捕まり、15年間を刑務所で過ごしました。刑務所の中では適切な教育や啓発プログラムなどはなく、ただ無為に日々を送っていたと当時を振り返ります。

 

「長い間、自分は家族を欲していたけど、その気持ちを押し殺していました。少しでも弱そうな所を見せないように、刑務所では強がっていた」と話すジェイソンさん。刑務所内では正常な人間関係を築けず、より暴力的で無慈悲な性格を形成していきました。

(Courtesy of Judy Klym)

 

更生プログラムで犬と出会う

 

ジェイソンさんの釈放の日が近づくと、彼はTAIL(Teaching Animals and Inmates Life Skills)という更生プログラムに参加することになりました。これは、長く収監されていた人たちに、レスキューされた動物の世話をさせることによって、彼らのスムーズな社会復帰を目指すというもの。動物の世話を通して、前向きな他者との関係や、心使いといった大切なことを学ぶのです。

 

ここで、ジェイソンさんは「シュガー・ママ」と呼ばれるメスのピットブル犬に出会いました。違法の闘犬場から助けられたシュガー・ママは、背中に傷を負っていました。手術を終えたばかりの彼女には、心のこもった世話が必要だったのです。

 

生まれた時から闘犬として育てられ、戦いを強いられてきたシュガー・ママ。そのほとんどを檻(おり)の中ですごした彼女の半生に、ジェイソンさんは自分自身を重ねました。

(Courtesy of Judy Klym)

 

「僕たちはとても似ていました。いつも、誰かを愛したかったし、他者に対して親切にしたかった。本当は、誰も傷つけたくなかったのに」

 

それまで、ジェイソンさんが囚人から聞いていたのは「強くなれ、ギャングになれ、タフな男になれ」という話ばかり。しかし、虐待と闘争の日々を送っていたにもかかわらず、愛情豊かで人懐っこいシュガー・ママに、ジェイソンさんは圧倒されました。彼女の世話をしているうちに、彼は人間性を取り戻したのです。

 

「彼女が、これからどうやって人生に向きあえばいいのかを教えてくれました。僕も、思いやりと愛を選びます。彼女ができるのだから、僕にだってできるでしょう」

ジェイソンさんの仕事は、シュガー・ママが社会復帰できるように、「お座り」や「待て」などのトレーニングをすること。一方、彼はシュガー・ママのしつけを通して、忍耐や責任といった大切なことを学んでいきました。

 

(Courtesy of Judy Klym)

 

人生を再スタート

 

犬の更生プログラムを終え、里親を探す準備が整ったシュガー・ママ。しかし、その頃にはすでに、ジェイソンさんと彼女の間には、切り離せないほどの深い絆がありました。釈放後、彼はすぐにシュガー・ママを引き取り、人生を再スタートさせました。

 

2年後に開かれた講演会では、空調設備の技術者としてフルタイムで働き、結婚して幸せな生活を送っていると話すジェイソンさん。そして彼の側にはいつもシュガー・ママがいてくれたと話しています。

 

(翻訳編集・郭丹丹)

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