ヤンゴンの観光地で観光客を待つゾウ使い、2007年撮影(Khin Maung Win/AFP/Getty Images)

ミャンマー 絶滅危惧アジアゾウの死が増加、中国に漢方薬の材料で流通

ミャンマーに生息する野生のアジア象の数が激減している。象の皮膚は中国漢方薬として人気が高く、闇市場に出回っている。

「ゾウの皮?4時間もあれば、森で採ってこられるだろう」南西部の町チャイトーで、ある小売店員は9月11日、現地英字紙ミャンマー・タイムスに語った。

アジア象は、国際資源保護連合(IUCN)が指定する絶滅危惧種。英国拠点の動物愛護のNGO団体エレファント・ファミリーは最近、ミャンマーと中国で現地調査を行い、アジアゾウの現状に関する調査報告をまとめた。

ゾウの皮は、高い治癒効果を持つ漢方薬の材料と信じられている。中国最大手検索サービス・百度によると、ゾウの皮には胃炎や潰瘍の治療、皮膚や筋肉の再生を促進できるという。

また、報告によると、ゾウの皮はブレスレットやネックレスなどのアクセサリーとして使われる場合もある。

ミャンマーで発見された野生のアジアゾウの死亡報告数は、2012年以降増加している。同年以前は、毎年10頭未満だったが、2013年には26頭、2016年には61頭に急増した。

ゾウの死骸の発見数の増加につれ、中国のSNSではアジアゾウの皮膚の利用方法について、話題となる回数が増える。ゾウの皮のアクセサリー、粉末、皮の一片などがキーワードになっている。

2018年、エレファント・ファミリーは雲南省、福建省、広東省の市場で、ゾウの皮を使った製品を発見した。ミャンマーでは、ゾウの皮は、平均価格1キロ当たり660元(約9000円)で取引されているが、広東省広州では、同じ重さで平均1800元(約3万円)で販売されていたという。

ゾウの皮の製品は、市場やSNSの小売にとどまらない。中国の製薬会社は、政府の国家林業局がゾウの皮製品の製造と販売許可を出して以降、これらの製品は合法的に流通し、医薬品扱いで宣伝も認可されているという。

世界自然保護基金(WWF)のミャンマー事務所ニコラス・コックス代表は、ミャンマー・タイムズの取材に対して、ミャンマーでゾウを殺害し製品を流通させるのは困難なため、ゾウの皮は中国市場に出回り始めたのではないかと語った。

WWFの報告によると、アジアゾウの推定個体数は野生あるいは飼育下のものも含めて3万~5万頭。ミャンマー、スリランカ、タイ、インドなど13カ国を合わせた数字となる。

中国電子商取引アリババが運営する、ネット通販サイト1688.comでは、ゾウの皮を使ったアクセサリーを販売する店舗が多数存在している。8月、中国官製メディア・澎湃によると、ミャンマー北部の町モンラには、多くの中国からの輸出入商人がゾウの皮を買い付けに来ているという。

(文=フランク・ファン/翻訳編集・佐渡道世)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]