電車の中で突然、誰彼となく激しくののしりだす人を見たことはありませんか?仕事のストレスがピークに達しているのか、あるいは悩みや不安が鬱積しているのか…。本当は彼らはただ孤独で、人との触れ合いを求めているだけなのかもしれません。
昨年2月、エハブ・タハさん(Ehab Taha)がカナダのバンクーバーで地下鉄に乗っていた時のことです。
頭をそり上げた強面の男性が、車内で意味もなくわめき散らし始めました。彼の罵詈雑言(ばりぞうごん・きたない言葉で、悪口を並べたててののしること)に耐えかねた乗客は他の車両へ移り、その他の人たちもあきれた様子。男性は車内をウロウロし、初老の女性のすぐ横で立ち止まりました。その時女性がとった行動にタハさんは目を見張りました。なんと、女性は男性に手を差し伸べたのです。
女性が待っていると、男性も手を握ってきました。男性は床に座り込み、15分~20分くらい二人はじっとそのまま。時に男性がイライラしだすと、女性は彼を見つめ、彼の心を静めているようでした。次第に男性の目にはうっすらと涙が。目的地に着くと男性は「ありがとう、おばあちゃん」と言って、地下鉄を降りていきました。女性の行動に感激したタハさんは、その様子を写真に収めました。
タハさんが話しかけると、70歳だという女性は涙を浮かべながら言いました。「彼に孤独を感じてもらいたくなかったの。私にも彼と同じくらいの息子が二人いるから」「人生は、時に人を辛い環境に追い込むものよ」
タハさんがその日のエピソードをFacebookにアップすると、たちまち多くの反響がありました。彼女はCTVニュースの取材に応じ、「時には人とのふれあいの方が他の何よりも勝ることがある」と語り、「このような人をただ怖がるのではなく、彼らに手を差し伸べて助けることが大事」と話しています。
(文・郭丹丹)
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