宋の粛王と沈元が使節として北方へ行き、燕山で宿をとった後、言葉遣いが非常に優美な3000字ほどの唐の石碑を見つけた。沈元は記憶力が非常にたけていたので、何度も朗誦(声高く読む)を繰り返すが、傍らを歩いている粛王は気にもとめないようであった。
宿に戻った沈元は、自分の才能を顕示するため、ただちに筆を執り石碑の文章を紙に書き始めた。しかし覚えていない14カ所が空いていた。粛王がそれを見て、筆を執って空いていた箇所を埋めてから、5カ所ほど間違ったところを修正した。修正し終えてから、粛王はその場にいた人と別のことについて語り始め、いささかも傲慢な気色を顔に現そうとしなかった。これをみて、沈元は大変驚いて、粛王に敬服するようになった。
「自分は他人よりも勝っていると誇示してはならない。なぜなら、他人は自分より勝っているからである」ということわざは、全くその通りである。
(編集・望月 凛)
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