焦点:スーダンとアルジェリア、「アラブの春」は訪れるか
[ドバイ/チュニス 14日 ロイター] – アフリカのアルジェリアとスーダンでは国民の支持を失った長期政権を軍が倒したが、2011年の中東民主化運動「アラブの春」後に改革が進まなかった他のアラブ諸国の動向をなぞっているように映る。
アラブの春では政治や経済改革への期待が高まり、エジプトでは軍が傍から注意深く見守った後、政治的な影響力を強めるために混乱に乗じて介入。軍幹部は、独裁体制を維持していたムバラク政権に反発する国民のデモを鎮圧できないと悟ると、ムバラク氏を退陣に追い込んだ。
史上初となる自由選挙ではイスラム組織を基盤とする政権が誕生し、2年後には国防相だったシシ氏がクーデターを主導して大統領に就任。シシ氏は14年と18年の行われた選挙でも勝利し、いずれも97%の支持を得たと主張している。エジプト議会は、大統領の就任期間を2034年まで延長する憲法改革を提案している。
スーダンでは、約30年の長期政権を維持したバシル大統領が先週、大規模デモに直面し、クーデターで失脚した。
国民は国防省周辺に集まり、軍がバシル大統領の解任を後押しするよう求めた。軍政を率いる移行軍事評議会の議長には国防相のイブンオウフ氏が就任したが、市民の猛反発を受けてわずか1日で辞任し、アブデルファタハ・ブルハン氏が後任に就任。ブルハン氏は13日、最長2年の移行期間を経て文民政権を発足させることなどを約束した。
変化を後押ししたのは国民だ。スーダン人はスローガンで「勝利か、さもなくばエジプトになる」と呼びかけた。
コメンテーターのマッジ・エル・ギズーリ氏は「最大の間違いは、軍が味方になるとの期待があることだ。軍に対する思いは理解するが、何のために存在しどんな行動を取る存在かを誤解している。」と話す。
アルジェリアのガイドサラハ軍参謀総長は、より平和的な解決策を打ち出した。高齢のブーテフリカ大統領(82)が5選を目指して大統領選に出馬した際、退陣を求める考えを表明した。
アルジェリアでは、30歳以下の4人に1人が失業中で、この不満から収入源を原油・ガスから多様化したり経済の自由化を求める動きが起きている。スーダンでも生活状況改善への要求がクーデターにつながった。
29歳のスーダン人販売マネジャー、エルシェイク・アリ氏は、今起きているデモは政治よりも経済問題が中心で、厳密には「アラブの春第2章」ではないと指摘した。「スーダンやアルジェリアで起きているのは、悲惨な経済状況や飢えに見舞われ、自由を奪われ虐げられている若年層の反発だ」と指摘。「どのような形にせよ勝利ではない」と話す。
最近、アラブの春に関する書籍2冊を出版したロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの中東政治学のファワズ・ジョルジュ教授も同じ見方だ。教授は「アラブの春という言葉は非常に誤解を招きやすい。すべてが花開き、長年続いた深刻な危機を解決する特効薬のように聞こえるからだ」と指摘した。
中東地域での動きは、アルジェリアやスーダンの国民が自由やよりよい未来を求めても、その希望は打ち砕かれそうだ、と示唆している。
チュニジアは民主化の成功事例ともてはやされるが、経済危機によって生活水準は下がった。リビアは「ニューカダフィ」と呼ばわれる有力軍事組織「リビア国民軍(LNA)」のハフタル司令官がシラージュ暫定首相と対立し、国家分裂状態に陥った。シリアやイエメンも内戦が続いている。
スーダンやアルジェリアも民主化の先行きは不透明だ。
ジャーナリストのジアド・クリシェン氏は「軍は影響力を維持したがるだろう。権力の甘美さと優越感を知った軍は、自分たちだけが国を守れると思い込む」と指摘した。
(Michael Georgy and Tarek Amara記者)