全米の大学キャンパスなどで頻発している活発なパレスチナ支援デモに、中国共産党と関連のある団体が資金提供していることが明らかになった。「2024年米大統領選に向けて不安をあおり、若者を過激化させ、米国を不安定化させることが目的」と問題を指摘したシンクタンクは分析している。
ネットワーク・コンテイジョン・リサーチ・インスティテュート(NCRI)が発表した報告書によると、2023年10月以降増加したパレスチナ支援デモの中心にいるのが、中国共産党とつながりのあるマルクス主義者の実業家ネビル・ロイ・シンガム氏率いる非営利団体だという。
シンガム氏が所有する団体、例えば「The People’s Forum」「Justice and Education Fund (JEF)」「United Community Fund (UCF)」「The Progress Unity Fund (PUF)」「BreakThrough Media (BTメディア)」などの極左の非営利団体は、米国の非営利団体制度の抜け穴を利用し、反米的で反資本主義的な運動に多額の資金を投入している。
JEFは2022年に、中国共産党プロパガンダを伝えるニュースサイト「NewsClick」に290万ドル、シンガム氏が上海でオフィスを共有するプロパガンダ会社「上海馬酷文化伝播有限公司」」に230万ドルを支払っている。
さらに、BTメディアは中国共産党の地政学的利益に沿った報道を行っており、「中国がいかに勝利するか?資本主義は本質的に崩壊する」「中国の台頭」「習近平は共通の繁栄を目指す」といったタイトルの動画を制作している。
これらの団体は大手金融機関を経由しつつ互いに複雑な資金的つながりを持っているが、特徴的な資金の流れから、背後にはシンガム氏の存在があると指摘している。
中共と20年来のつながり
シンガム氏と中国共産党とのつながりは、2000年代初頭にまでさかのぼる。2001年から2008年にかけて、シンガム氏は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)のコンサルタントを務めていた。ファーウェイは中国共産党の軍との関係が深く、カナダや米国でスパイ活動の疑いが持たれている。
ニューヨーク・タイムズの2023年8月の調査によると、シンガム氏は少なくとも2019年以降、中国のプロパガンダ機関と協力関係にある。同紙によれば、シンガム氏は2019年に中国人パートナーとコンサルティング会社を設立しており、これらのパートナーは中国共産党のプロパガンダ活動に従事している。2023年7月に、シンガム氏が中国共産党主催の戦略的コミュニケーション・ワークショップに出席する姿も撮影されている。
2023年11月、インド当局は、シンガム氏が関与するニュースサイト「NewsClick」が中国から違法な資金を受け取り、インドの国家安全保障を脅かすプロパガンダを宣伝した疑いでシンガム氏に事情聴取を行っている。
米議員も以前シンガム氏の活動に警鐘を鳴らしている。2023年にマルコ・ルビオ上院議員(共和)は司法長官に宛てた書簡で、シンガム氏に関連する団体の外国エージェント登録法違反についての調査を要請している。
さらにはシンガム氏の妻であるジョディ・エバンス氏も、中国共産党との関係を指摘されている。エバンス氏は反戦団体「CODEPINK」の共同創設者で、長年にわたり米国の極左活動に関与してきた。シンガム氏との結婚後、中国共産党への支持を公言するようになった。来年1月には、中国の教育機関に所属する研究者と共著で「中国は敵ではない」と題した書籍を出版する予定だ。
テロとの繋がり
全米のキャンパスで活動するパレスチナ支援運動の中心メンバーには、ハマスや「パレスチナ解放人民戦線(PFLP)」といったテロ組織とつながりのある団体も名を連ねている。報告書は、活動団体がPFLPの幹部と会談したことや、ハマス関連団体の資金集めに関わったと指摘している。
報告書は、こうした団体はパレスチナ支援を掲げながらも、その実体は反政府・反資本主義の革命的アジェンダを掲げる運動で、敵対的な外国勢力の道具と化していると指摘。「2024年米大統領選に向けて不安をあおり、若者を過激化させ、米国を不安定化させることが目的」と分析している。
これらは中国共産党の戦略的利益とも一致する。「国家の安定に対する脅威としてこれらの動きを認識し、米国社会の民主的価値観と構造的統合性を守るための行動が必要だ」と報告書は結んでいる。
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