中国国内通信事業者は、ファーウェイ5Gに積極的ではない(David Becker/Getty Images)

<時事評論>国際シェア拡大のファーウェイ5G、海外輸出とは裏腹に国内事業社は尻込み

中国共産党政府は、通信機器大手ファーウェイに公的補助金を投じるなど全面的な支援をして、コスト安な中国5Gインフラを積極的に輸出している。しかし、中国国内3大通信事業社は、技術的な未発達により、現在の5Gサービス展開にはしり込みしている。中国政府が後押しするファーウェイ5G輸出は、対外宣伝の要素が濃厚だ。

ドイツの特許データ会社Iplytics社の統計によると、ファーウェイは2019年4月までに、5G標準に必要な特許を1554件所有し、中国企業が世界全体で34%に上り、1位となっている。さらに4月22日、ファーウェイは3月末までに5G用の商用契約を40件結んだと発表した。5月までに5G用の基地局10万棟を全世界に向けて出荷する見込みだという。

しかし、この40件のなかに、国内契約は一つもない。ファーウェイ5G製品ライン社長の楊超斌氏は4月16日、深センで行われた業界アナリストの会議の席上で、この40件の5G商用契約の内訳はヨーロッパから23件、中東から6件、アジアから6件、アフリカから1件だという。楊氏は「中国本土では多くのテストをしたが、商用ではない」と述べた。

中国国内メディアによると、中国政府は中国通信事業社に対して5G使用権許可をまだ交付していないため、ファーウェイも中国国内受注がないのだ。

中国三大通信事業社は5G展開にしり込みするには訳がある。

中国のコラムニスト・鉄流氏は、ファーウェイを含む通信技術会社の5G技術を比較した。結果、5Gによるシステム処理能力の全体の向上は、4Gと比べて著しいといえるものではないとした。5G設備の増設により通信企業はコストが増加しており、中国の大手キャリアは、5Gサービスには消極的だという。

鉄流氏によれば、現在の未発達段階の5G技術による効率と収益向上の程度は、大幅な資金投入から計算すると割に合わない。このため、近い将来、新型5Gや6Gの展開が見込まれることを想定すると、現在、5G投資は適当ではないという。

このように、5Gはまだ技術開発の模索段階にある。にもかかわらず、ファーウェイは盛んに海外輸出に注力している。「5Gをマスターすれば、未来が手に入る」「ファーウェイの5Gは一番」「ファーウェイ5Gは世界最強」。これらの宣伝文句の裏には、多額の補助金を出している中国共産党の政治的意図が見え隠れする。

中国聯通研究院の張雲勇院長は2019年3月、中国3大通信事業者の5Gへの投資には最終的に2兆元が必要だとの推計を発表した。しかし、中国移動、中国聯通、中国電信の3大事業者の現在の投資計画は、この数字よりはるかに少なく、3社合計で20%にも満たない。

チャイナ・モバイル(中国移動)は3月21日、2018年の業績報告書を発表した。ここで、2019年の5G投資計画を172億元以内とした。5G基地局は3~5万棟建設する予定だという。

チャイナ・ユニコム(中国聯通)は3月13日の業績発表で、2019年、5Gに60億~80億元を投資することを明らかにした。

チャイナ・テレコム(中国電信)は3月19日の決算で、2019年の5G投資予算は90億元、5G基地局は2万棟追加するという。

2019年には3大事業者が新たに設置する予定の5G基地局は、合計でも10万棟弱程度。いっぽう、中国通信事業社は4Gサービス開始当時、約2年で4G基地局を100万棟置き、4Gのカバー率を90%以上に引き上げた。

鉄流氏によれば、5Gに対する国内事業者の関心が低いのは、未発達な5G技術をいま強引に設置しても、メリットは少ないと見ているためだという。

翻って、国際的にファーウェイが5G占有率拡大に「成功」している。通信設備の建設や輸出に、中国政府は多くの補助金を投じているため、破格値で提供できる。中国開発銀行はファーウェイについて非常に高い輸出信用を提示している。こうした後ろ盾を持つファーウェイは、海外同業大手クアルコムやサムスンらとの競争に有利だ。

中国政府による、グローバル展開する中国企業に対する巨額補助金は、国際競争に不合理をもたらすとして、米政府や欧州議会、日本から批判されている。

2018年末、中国移動、中国聯通、中国電信は、フィンランドの通信機器大手ノキアおよびスウェーデンの通信機器大手エリクソンと5G枠組み契約を締結し、20億ユーロの注文を取得した。

これについて、中国国内メディアや国内インターネット世論では、中国3大通信を「非愛国的だ」となじる声が巻き起こった。中国共産党政府は、国内通信事業者に対して、5G導入ならファーウェイ機器を購入するよう圧力を掛けている。これには、中国共産党による「ファーウェイを買わないことは非愛国的」という政治的意向が作用している。

米上院マルコ・ルビオ議員(共和党)は5月7日、SNSで、「中国は、欧州の反ファーウェイ運動に反対するよう、ノキアとエリクソンに脅しをかけている」と書いた。同議員によると、もし両社がファーウェイの脅威を否定する意見を出さなければ、両社の中国国内市場を15%削減するという。ファーウェイが、中国共産党政府の手駒となっていることが伺える。

これらの事から、ファーウェイの積極的な海外5G展開は、自身が「世界最強」と喧伝するのは技術的優位性からではなく、中国共産党による政治的な強制力と、プロパガンダの要素が強いと考えられる。

(文・龍騰雲/翻訳編集・佐渡道世)

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