米中摩擦が激化、リスク回避で株安円高:識者はこうみる

[東京 14日 ロイター] – 米国の対中関税引き上げに対抗して中国が報復関税措置を発表し、貿易摩擦が先鋭化したことで、前日の米国株は急落。リスク回避の流れが東京市場にも波及し、日経平均が寄り付きで2万1000円を割り込んだほか、ドル/円も109円台前半でスタートした。ただ、その後、トランプ米大統領の米中交渉への楽観的な発言が伝わったことで、日経平均、ドル/円とも、やや値を戻している。

<東海東京調査センター シニアエクイティマーケットアナリスト 仙石誠氏>

米中貿易摩擦の激化懸念から全体相場は下がり続けているが、個別には、内需系で株主還元を強化した銘柄に買われたケースも見られた。4、5月に発表された自社株買いの金額は合計で2兆円規模まで積み上がってきており、株主還元策が今後の日本株の下支えになる可能性がある。

手元の集計では、年初から4月第4週までの海外投資家の現物・先物を合わせた売買動向は、約1兆4000億円の買い越し。米中の話がある程度前向きに進展したところで海外投資家が買った分は1兆4000億円あると言える。それを自社株買いの金額は上回る規模まで膨らんできている。

海外投資家の売買と自社株買いでは時間軸を意識しなければならない。自社株買いは基本的に2、3カ月かけて買うのに対し、海外投資家は短期で売買してしまうため、時間軸の差は短期的な株価の下落につながってしまう。米中対立が悪い方向に進んだとしても、いずれ需給は自社株買いによって均衡され、株価はそれほど下がらないという局面も出てくるのではないか。

米中関係は想定以上にこじれているが、悪化すればするほど早期に改善の方向に向かっていく可能性もある。経済指標が悪化して、国民の求心力を失うことは米中ともに避けたいはずだからだ。最悪の結果まで陥らないというのは米中摩擦のポイントとなるだろう。

<YJFX マーケティング部FXエバンジェリスト 遠藤寿保氏>

米中対立の激化というファンダメンタルズの悪化を受け、ドルは近く109円台を割り込むと予想している。ドル買いになりそうな要因がほとんど見当たらないことを考慮して、テクニカル面からさらに下値めどを計測すると、いくつかのポイントがまとまっているのは、まず108円半ばとなる。

その水準を割り込むと、次のポイントは107.70円付近、107円ちょうど付近と続く。こうした水準は打診買いのめどとなりやすく、持ち高がかさんでいない個人などの買いが入ってくる可能性が高い。

4月は相場の動きが乏しかったこと、連休中のフラッシュ・クラッシュを警戒する向きが多かったことなどから、個人の取引は芳しくなかった。そのため現時点のポジションは軽めで、連休明け後の円高進行局面でも、個人が損失を被ったという話はあまり聞かない。

現在はドルを売り持ちにしていた一部の個人が利益確定の買いを入れており、売買バランスはやや買いに傾いてきたが、まだ買い向かおうとする勢いも見られない状況だ。

<クレディ・スイス証券 プライベート・バンキング本部CIOジャパン 松本 聡一郎氏>

現時点で米中貿易摩擦によるマクロ経済への影響はそれほど大きくない。中国製品2000億ドルに25%の関税がかかっても米経済への影響はGDP(国内総生産)で0.2%程度の押し下げにとどまる。仮に3250億ドルに追加関税がかかったとしても、潜在成長率を1%程度上回って推移している米経済が腰折れするような事態にはならないだろう。

さらに米中両国政府にとって、景気を悪化させるメリットはない。トランプ大統領は2020年に大統領選を控えているし、中国も内政的に景気の急減速を受け入れることは難しい。米国より中国の方が関税合戦による経済への悪影響は大きいが、政策対応がなされると予想される。米中両国は比較的早い時期に通商交渉で一定の合意に至る可能性は高いとみている。

足元のマーケットは過剰反応ではないか。急激な株安は逆資産効果が発生するので警戒が必要だが、株安が長期間に渡らなければ、悪影響は小さい。一時的に急落した局面は買いのチャンスになるだろう。

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