中国当局、ロシアで道路改名求める 家電大手「ハイアール通り」現地反発
中国家電大手のハイアール(Haier、海爾)は、同社の冷蔵庫製造工場を置くロシア西部タタールスタン共和国の工業都市で、約2キロメートルの長さの通りを「ハイアール通り」と名付けようとしており、ロシアで論争を呼んでいる。
ロシアメディア・視点5月24日付けによると、投資者であるハイアールから道路の改名が提案され、ロシア現地の市政府は受け入れた。
中国家電大手のハイアールは、タタールスタン共和国の工業地域として知られるナーベレジヌイェ・チェルヌイ市の冷蔵庫製造工場に、5500万ドル(約60億円)を投資し、600人を雇用している。
さらにハイアールは新たな工業団地を建設する予定で、10億米ドル(約1080億円)を投じて12の家電製造プラントを作る計画がある。計画でチェルヌイ市は、127ヘクタールの土地をハイアールに充てた。中国当局は、周辺区域の呼称を変更することも求めている。
ロシアメディア・コメルサントによると、チェルヌイ市長は道路の改名案に反対せず、地理委員会が処理を行った。委員会委員によれば、通り周辺は住宅街ではなく、新しい工場建設の経済効果により、支持票多数となり、改名案は可決したという。
しかし、ロシア国内で道路改名が報道されると、多数のロシア人は反対を表明した。ロシアのSNS、VKontakteが調査を行ったところ、回答者の80%以上がこの決定に反対していることが明らかになった。
ロシアメディア・視点によれば、これまでもハイアールは各国にある自社工場の周辺道路に名前を付けているという。ハイアール公式情報によれば2008年、米国サウスカロライナ州カーショー郡の市内には、ハイアール通りがある。ハイアールが拠点とする中国山東省青島市には、ハイアール通りのみならず、寄付でハイアール希望小学校が建設されている。
地元のメディア・チェルヌイビジネスオンラインもまた、反対意見を表明している。「私たちは投資と雇用の増加に反対していない。しかし、私たちの自尊心はどこに行ったのか?」
同メディアによると、市の失業率は非常に低い。このため、中国の半官製企業とも呼ばれるハイアールは、労働者が足りないことを理由に、中国から多数の労働者を送り込むのではないか、と推測している。
ハイアールは2015年に、チェルヌイ市内にある高度経済開発区に投資して洗濯機工場を建設した。この開発区では、税制上の優遇措置と行政の緩和政策を享受できるためだ。2020年までに、この冷蔵庫工場では、年間50万台の生産を達成するという。また、さらなるハイアール工業団地が2030年までに完了する予定。
中国海洋大学の孫林傑教授は2016年、日本の名城大学の中国人留学生のインタビューに対して、「個人的にはハイアールは国営企業だと考える。なぜなら、国の土地を無料で使用でき、税金の減免があり、資金の支援があるからだ」と答えた。
(編集・佐渡道世)