中国を訪問したロシアのニコライ・パトルシェフ連邦安全保障会議書記は19日、郭声琨・中央政法委員会書記と会談した。パトルシェフ氏は中国との協力関係を強化する方針を強調した。一部の専門家は中露関係が実際はもろいと指摘した。
プーチン大統領の最側近の1人で、安保トップを務めるパトルシェフ氏は福建省で、中国の公安、司法、検察、治安、情報担当のトップである郭声琨氏との間で、第7回中露法施行安全協力メカニズム会議を行った。
同氏は「現下の情勢では、中露両国は互いに支え、協力関係を発展させる意欲をより強く示す必要がある」と述べた。
郭声琨氏は、中露間の包括的戦略協力パートナーシップは「常に健全で安定した勢いで発展している」と評価し、「両国の政治的信頼は深化し続けており、互恵的な協力関係も多くの成果をあげた」と発言。
同日、パトルシェフ氏と外交トップの楊潔篪・共産党中央政治局委員は、第17回中露戦略安全保障協議に出席した。楊氏は「中露双方は、相互の核心的利益と重大な関心事に関して互いに支え合っている」と強調。
連携を誇示するも、実はもろい関係
今月以降、中国が露側の大規模な軍事演習に参加したほか、中国共産党ナンバー3の栗戦書・全国人民代表大会(全人代)常務委員長が訪露し、習近平国家主席とプーチン大統領が首脳会談を行うなど、中露両国は連携を誇示した。
欧米では、一部の専門家が、利益に基づく中露関係は「実際はもろいものである」と相次いで見解を示した。
ポーランドのシンクタンク、東方研究センター(Centre for Eastern Studies)の中国問題専門家であるヤクブ・ヤコボウスキ(Jakub Jakóbowski)氏は16日にツイッター上で、中露同盟関係には「共通の関心、信頼、友情に基づく」という西側の共通認識を取り入れていないとした。
同氏は中露両国の共通の目標は「政権の維持」と「米国の秩序を打倒する」にあるとし、中国は西側の経済制裁を含めて、ロシアのために「自らの政権を脅かすような行動はとらないだろう」と推測。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は15日の記者会見で、現時点、プーチン政権に対し「中国が実質的に支援する動きも、ロシアに対する制裁に違反したこともない」と話した。
マサチューセッツ工科大学(MIT)安全保障研究プログラムの責任者、テイラー・フラヴェル(Taylor Fravel)氏は、中国がロシアへの支援を強化していないことは「(中露)同盟が実際は弱いものだと物語っており、今後大きな変化はないだろう」とツイートした。
米国などから軍事支援を受けているウクライナ軍はこのほど、ロシア軍への反攻を強め、ロシアから広い地域を奪還している。
ジョンズ・ホプキンズ大学のハル・ブランズ(Hal Brands)教授は、ウクライナ軍の反転攻勢でロシア軍の損害が拡大し戦闘能力がさらに低下すれば、「プーチン氏が中国により多くの支援を求めるだろう」とし、中国側が露側に応じなければ中露関係が「緊張する」と示した。
ロシアは中国のお荷物?
プーチン大統領と習近平国家主席は15日、ウズベキスタンでの上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせて会談した。
プーチン氏は、ウクライナ情勢を巡り「中国の友人がバランスの取れた立場であることを高く評価する」と語った。習氏は「互いの核心的利益に関わる問題で強く支え合いたい」と中国指導部の従来の主張を繰り返し、両国の外交関係について新たな見解を明示しなかった。
対面形式の中露首脳会談は、ロシアが2月にウクライナ侵攻して以降初めてだ。2月の中露首脳会談では、中露間の協力関係に「上限はない」とする声明が発表された。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は英シンクタンク、国際戦略研究所の専門家の話を引用し、ウクライナ紛争の長期化とロシア軍の敗退の見通しは「中国にとって戦略的敗北になる」との認識を示した。ウクライナ情勢をきっかけに、国際社会が台湾海峡での軍事的挑発により関心を寄せただけではなく、米国などはインド太平洋地域の安定を守るため、安保上の支出を増やした。
中国政府はロシアのウクライナ侵攻を「侵攻」と認めていない。中国政府系メディアはロシア寄りのプロパガンダを繰り返している。ウクライナ問題で失態し、弱体化したロシアは「中国にとって役に立たないパートナーとなっている」とFT紙は示した。
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