石破茂首相が21日に中国の王毅外相、韓国の趙兌烈外相と会談し、未来志向の協力関係を築く意向を示した一方で、アメリカではルビオ国務長官がトランプ新政権の方針の下、中国共産党政権に対し厳しい姿勢を取り続けている。この日米両国の対中姿勢には明確なコントラストが見られる。
石破首相は三者会談で、「隣国ならではの難しい問題も時に発生するが、国益に基づく現実的な外交により、諸懸案を含めて対話し、未来志向の協力関係を築いていきたい」と述べた。特に少子高齢化や災害対応など共通課題への取り組みを強調し、地域全体の平和と繁栄を目指す姿勢を示した。
日米「対中政策」の差異
しかしながら、現在日中間には、尖閣諸島問題や中国共産党軍による日本周辺での軍事活動、経済摩擦など、数え上げればきりがないほどの問題がある。今回は三者の会談であるため、日中間で懸念される具体的な問題には触れなかったと言えるが、この「対話重視」のアプローチは、中国との関係改善を模索する日本政府の慎重な姿勢を反映している。
一方、アメリカではルビオ国務長官が中国に対して強硬な政策を推進している。ルビオ氏は人権問題や地政学的課題について厳しい批判を繰り返しており、中国政府によるウイグル人やチベット人への迫害、法輪功学習者への臓器強制摘出問題などを「大量虐殺(ジェノサイド)」と断じている。同氏は以前、「法輪功保護法案」を提案し、中国本土で行われているとされる国家主導の強制的な臓器摘出に関与した人物への制裁や報告義務を求めるなど、人権侵害への対応を具体化している。

また、ルビオ氏は中国の地政学的拡張主義にも警告を発し、日本やインド、オーストラリアとの連携を強化することで、中国の影響力拡大を抑制する姿勢を明確にしている。同氏は「中国が我々の地域でより大きな影響力を持つ世界を容認することはできない」と述べ、中国共産党が主導する一帯一路構想や南シナ海での行動に対抗するための外交努力を進めている。
このように、中国共産党に対して、日本が対話と協調を重視する姿勢を示し続けている一方で、アメリカは人権侵害や地政学的課題に対して厳しい態度で臨んでいる。石破政権の柔軟なアプローチは地域安定への寄与を目指しているものの、具体的な懸案事項への言及が欠けている状態が続けば、日本の国民の理解もぼやけたものとなるだろう。一方で、ルビオ長官の強硬姿勢は、中国との緊張関係が高まるリスクも伴っており、その影響がどこまで広がるか注目されている。日米両国の異なる対中政策は、それぞれの国内外情勢や外交目標によって形作られており、今後もその違いが際立つ可能性がある。
そして、この日米間の対中政策の差異の理由は、両国の政府が「中国共産党の本質」をどこまで見抜いているかの差でもあるだろう。
日本の対話外交と人権問題への対応 もう失敗は要らない
石破茂首相が未来志向の協力関係を重視し、中国との対話を進める姿勢を示す中で、日本の対中政策における人権問題への対応が問われている。特に、中国共産党による人権侵害が国際社会で厳しく批判される中、日本がどのような立場を取るべきかについて再評価が必要だ。
1989年6月4日に発生した天安門事件は、中国共産党政権による民主化を求める学生や市民への武力弾圧事件として記憶されている。この事件は、数千人規模の死者を出したとされ、人権弾圧の象徴的な虐殺事件として国際社会に衝撃を与えた。しかし、事件後の日本政府の対応は批判的な見方を受けている。日本政府は事件直後、「人道的見地から容認できない」と声明を出しながらも、「中国の国内問題」と位置付け、人権問題への対応を後退させた。

さらに、日本は対中経済協力を継続する方針を早々に打ち出し、「改革開放路線が維持される限り経済協力を変更する理由はない」として、中国との経済関係維持を優先する姿勢を示した。この対応には、戦後賠償の意味合いがあるとの考えや、改革開放政策支援が中国の民主化につながるという期待が背景にあった。しかし結果として、この政策は中国共産党体制の維持に間接的に寄与した可能性がある。


日本政府はG7による対中非難声明への採択にも当初反対し、国際社会との足並みを揃えなかった。このような対応は、人権や民主主義よりも経済関係を優先する姿勢が顕著であり、天安門事件後の日本の対中政策は「失敗」として再評価されるべきだとする声もある。
現在、中国共産党政権によるウイグル人やチベット人への迫害、法輪功信者への強制的な臓器摘出など、深刻な人権侵害が続いている。前述の通りアメリカではルビオ国務長官が提案した「法輪功保護法案」などを筆頭に、中共政権による臓器強制摘出やその他の人権侵害に対して厳しい制裁措置を求めている。一方で、日本政府は現時点で具体的な人権問題への対応について明確な立場を示していない。
石破政権が進める「未来志向」の外交姿勢は、地域安定への寄与という観点では評価されるものの、人権問題への対応が曖昧である点について懸念もある。天安門事件後の失敗から学び、中国共産党政権による人権侵害に対して厳しい姿勢を示すことは、日本が国際社会で果たすべき責任であり、もう二度と同じ過ちを繰り返すべきではない。
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