2026年(令和8年)4月27日からニューヨークで開催されていた第11回核兵器不拡散条約(NPT:Non-Proliferation Treaty)運用検討会議が、現地時間5月22日に閉会した。国際的な紛争や対立が激化し、安全保障環境が一段と厳しさを増す中で開催された本会議では、最終的に全締約国のコンセンサスを得られず、成果文書は採択されなかった。これを受け、日本の茂木外務大臣は5月23日に談話を発表し、極めて残念であるとする一方、会議の意義と今後の日本の姿勢を示した。
日本の最大限の外交努力
日本は唯一の戦争被爆国として、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であるNPTの維持・強化に向け、本会議が意義ある成果を収めるべく全力で外交努力を重ねてきた。事前に「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」の提言や、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI:Non-Proliferation and Disarmament Initiative)としての成果文書に関する提言を提出したほか、NPDIやG7として協力を呼びかける共同声明を発出している。
会議中には、国光外務副大臣が一般討論演説で高市総理のメッセージを代読し、被爆地の思いを伝えながら各国に結束を呼びかけた。また、日本が主導した軍縮・不拡散教育共同ステートメントには過去最多となる116か国が賛同し、建設的な議論に向けた雰囲気の醸成に大きく貢献した。さらに会議終盤には英利外務大臣政務官を派遣し、ドゥ・フン・ヴィエット議長や各国へ働きかけを行うなど、最後まで採択に向けた最大限の努力を尽くした。
過去最多の賛同を集めた「軍縮・不拡散教育共同ステートメント」
今回の会議において特筆すべき成果の一つが、日本が主導した「軍縮・不拡散教育共同ステートメント」である。2025年の第3回準備委員会において日本を含む96か国を代表して発表されたこの声明は、本会議で過去最多となる116か国の賛同を集め、建設的な議論に向けた雰囲気の醸成に大きく貢献した。
広島・長崎への原爆投下から80年を迎える中、同ステートメントは、ノーベル平和賞を受賞した日本被団協など被爆者による長年の証言活動が果たしてきた不可欠な役割を強調し、軍縮・不拡散教育は常に「人間を中心としたもの」であるべきだと訴えている。時の経過とともに直接証言を聞く機会が減少している現状を踏まえ、被爆の実相や記憶を次世代へ継承していくことの重要性を指摘している。
さらに、現代の複雑な「原子力の時代」において、一人ひとりが批判的思考などのスキルを身につけることの必要性や、人工知能(AI)をはじめとする情報通信技術の進歩に合わせて教育プログラムを進化させる重要性も盛り込まれた。民間部門や若者など多様な関係者との連携を拡大し、核兵器国・非核兵器国を問わずすべてのNPT締約国に軍縮・不拡散教育を積極的に推進するよう呼びかけている。
外務大臣の評価と今後の展望
成果文書が採択されなかった結果に対し、外務大臣は談話の中で遺憾の意を示しつつも、決して悲観的な評価だけを下してはいない。会議での真剣な議論を通じて、核軍縮・不拡散体制の礎石としてのNPTの重要性が確認され、各国のNPTに対するコミットメントを再確認する機会となった点を重視し、これが今後の国際的議論を進める上での基盤になると評価した。同時に、困難な議事采配の中で分断を抑えるべく尽力した議長に対する敬意も表明した。
核軍縮をめぐる国際社会の分断が深まる中にあっても、核兵器国と非核兵器国の双方が広く参加する唯一の普遍的な枠組みであるNPTを維持・強化していくことは引き続き極めて重要である。外務大臣は談話の最後で、日本が今後も「核兵器のない世界」の実現に向け、現実的かつ実践的な取り組みを一歩ずつ、粘り強く着実に進めていく決意を強調している。
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