米国通商代表部(USTR)は2026年6月2日、1974年通商法第301条に基づき、世界60の国および地域の経済圏が強制労働によって生産された物品の輸入禁止措置を導入し、それを効果的に執行することを怠っていると断定した。USTRは、こうした状況が不合理であり、米国の商業に対する負担や制限になっているとして、これら対象国に対する新たな追加関税措置案を発表した。
米国は「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」などにより、中国・新疆ウイグル自治区などでの強制労働を念頭に置いた厳しい輸入規制を独自に敷いている。今回のUSTRの動きは、米国が自国で締め出している強制労働製品が、規制の緩い日本を含む他の国々に流れ込んで市場を歪めているとして、世界全体に米国と同調した厳しい輸入規制網を構築させようとする狙いがあると考えられる。
日本に対する影響と現状の指摘
日本は「強制労働による製品の輸入禁止措置を導入し、効果的に執行することを怠っている」54カ国のひとつとして明確に名指しされており、早急に責任ある対応を求められている。
今回の調査対象となった60の国・地域のうち、カナダ、EU、メキシコなど6つの経済圏は「効果的な『執行』を怠っている」とされた一方で、日本は中国や韓国、台湾などと同様に「『導入』および『執行』の両方を怠っている」グループに分類された。調査対象となったすべての国が、導入と執行のいずれか、あるいは両方において不十分であるとの結論が下されている。
提案された関税措置の詳細
USTRが提案した対抗措置は、対象となる経済圏からのすべての製品(一部の例外を除く)に追加関税を課すという非常に広範なものである。関税率は各国の対応状況に応じて以下の2段階に設定されている。
10%の追加関税
強制労働の輸入禁止措置を導入している国、互恵貿易協定等を通じて禁止措置の導入と執行を約束している国、または強制労働製品の輸入を防ぐための部分的な制度を導入している国。
12.5%の追加関税
上記に該当しないすべての国。日本は現在「導入も執行も怠っている」と判定されているため、このままでは12.5%という高い税率が適用される懸念がある。
なお、特定の衣料品や繊維製品については、一定の輸入量まで引き下げられた関税率(第301条関税率)で米国への輸入を認めるメカニズムも併せて提案されている。
措置の背景にある米国の強硬姿勢
ジェイミソン・グリアUSTR代表は声明で、「主要な貿易相手国が強制労働による製品の輸入に対処しないことは容認できない」と強い不満を表明した。同氏は、この現状が米国の労働者に不平等な競争を強いており、「貿易が世界中で強制労働を助長し、定着させるようなことがあってはならない」と述べ、各国にさらなる対策を強く求めている。また、強制労働の輸入禁止を怠ることは、強制労働に依存する企業に低コストでの生産を許し、強制労働を使用しない企業の収益性を損なうなど、市場を歪める要因になるとUSTRは指摘している。
今後の動向
USTRは、提案された追加関税措置について一般からの意見公募(パブリックコメント)を開始している。公聴会での意見陳述の要請は2026年6月22日まで、書面による意見の提出は7月6日まで受け付けられる。その後、7月7日に本措置に関する公聴会が開催される予定である。日本を含む対象国や関連企業は、この期間内に自国の取り組みを説明し、米国側へ働きかけることが求められる。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。