ロシアが9月1〜7日まで極東地域で実施する大規模軍事演習「ボストーク(東方)2022」には、中国やインドなど13カ国が参加している。ロシアが事実上支配する北方領土も演習の範囲内だ。専門家は、中露の軍事連携が北極から日本周辺まで拡大していると分析した。
中国共産党系の官製メディア・環球時報によると、中国軍は2018年から参加しているが、中国の陸・海・空軍が同時にロシアの軍事演習に参加したのは今回初めてだという。
台湾国際戦略学会の黄恵華副研究員は米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、「オホーツク海や日本海にも展開する今回の軍事演習は、中露の軍事での連携を誇示するためのものだ。日本政府は不安を募らせているに違いない」と指摘。「現状では、北極から日本近海までロシアと中国の協力関係がさらに深まっていることが見て取れる」と述べた。
黄氏は、アラスカ海で活動するロシアの北方艦隊や中国海軍の艦隊が「今後北極からベーリング海峡を通過し、太平洋に出るという光景がよく見られるようになる。これは最も注視されるべきことだ」と警鐘を鳴らした。
21年10月に行われた中露の合同軍事演習「海上連合2021」で、両軍の艦隊が初めて日本の津軽海峡を通過した後、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を含む日本周辺海域を頻繁に通過するようになった。
シンガポール国立大学アジア研究所の陳剛所長補佐はVOAに対して、ウクライナ侵攻と台湾問題でともに西側の圧力を受けている中露は合同軍事演習を常態化させていると指摘した。
「両国は軍事の連携を今後も続けるという意思表示だ。互いに相手の戦略に関心を持っているということが反映された」
「中国軍の武器をロシア軍へ」
米国在住の中国海軍司令部の元参謀(中佐)である姚誠氏は1日、今回の演習は2つの対立陣営の形成を意味すると述べ、「とりわけ中露はさらに関係を深めていくだろう」と自身のツイッターに書き込んだ。
姚誠氏によれば、中国軍は軍事演習終了後、使用した武器を持ち帰らずロシア軍に渡す可能性があるという。ウクライナ侵攻でロシア軍の武器が不足しているためだとした。中国からは空中給油機や殲-20などの作戦機も参加している。
中国軍はかつて同じ手法でロシア軍の装備を手に入れており、その過程には姚誠氏自身も直接関わっていたという。
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