欧米諸国がウクライナに軍事侵攻したロシアに対して制裁措置を強化する中、ロシアの専門家は、中国当局はロシアと西側の対立に乗じて、ロシアの自然資源の獲得を加速していると指摘した。
ロシアメディア「シークレット・マグ(Secretmag)」2日付によると、同国の政治学者であるドミトリー・アブザロフ(Dmitri Abzalov)氏は同メディア傘下のオンライン・マガジン「企業の秘密(Секретом фирмы)」のインタビューで、「中国当局がロシアのエネルギープロジェクトに参入し始めており、まもなく不況を回避する唯一の国になるだろう」と語った。
ウクライナ情勢をめぐって、ロシアへの制裁を強める欧米諸国と違い、中国当局はロシアに対する一方的制裁に反対し、ロシアとの経済協力を継続する用意があると表明している。
アブザロフ氏は、西側との対立を深めるため、ロシアの西側向けエネルギー輸出は大きな打撃を受けた一方で、ロシアの東側にある中国当局は恩恵を受けていると指摘した。
2月末のロシアのウクライナ侵攻を受けて、米政府はロシアの天然ガス生産・供給大手ガスプロム(Gazprom)の子会社、ノルドストリーム2AG(Nord Stream 2 AG)と同社のマティアス・ワーニヒ最高経営責任者(CEO)に対して制裁を発動した。ドイツのシュルツ首相も、同社のドイツ向け天然ガスのパイプライン・プロジェクト「ノルドストリーム2」の承認を停止した。
Secretmagによると、この後、欧州市場で天然ガスの価格が約59%急騰し、過去最高の1000立方メートル当たり2200ドルとなった。
その一方で、ガスプロムは2月末、中国側との間で「ソユーズ・ボストーク(Союз Восток)」と呼ばれる天然ガスパイプライン協定を結んだ。協定では、ロシアの天然ガスを運ぶ「シベリアの力2(Сила Сибириー2)」パイプラインは延長される。このプロジェクトで中国は毎年、モンゴル経由で500億立方メートルのエネルギーを獲得できる。
アブザロフ氏によると、現在、中国当局はロシアのエネルギー大手の株式を取得し、欧州の株主に取って代わろうとしている。英国のエネルギー大手BP(旧ブリティッシュ・ペトロリアム)は2月27日、同社が保有するロシア同業のロスネフチの株式19.75%を売却すると発表し、ロスネフチの取締役会から離れた。
アブザロフ氏は、中国側にとって液化天然ガスのように海上輸送の必要がなく、パイプラインで供給されるエネルギーは第三者によって遮断される心配がないと指摘した。また、同氏はロシアは農業、IT、冶金においても中国当局との関係を深めていると懸念しており、中国当局は今後ロシアから大量の大豆やカリ肥料を購入すると推測した。
「中国当局は、(自国の)経済成長を加速させるための歴史的チャンスを逃すわけにはいかない」
「今からおよそ2週間後、世界各国がインフレで苦しくなり、場合によっては不況に陥るかもしれない。その時、中国はGDP(の成長率)がゼロを上回る唯一の国になるだろう」とアブザロフ氏は述べた。
Secretmagは米ブルームバーグの報道を引用し、中国当局が2日、ロシアに対する欧米側の一方的な制裁に反対すると表明したにもかかわらず、少なくとも2行の中国大手銀が制裁に関わったと批判した。
米ホワイトハウスのサキ報道官は2月27日、米MSNBCのインタビューで、中国当局に対してウクライナを攻撃したロシアを非難するよう求めた。また、中国当局は米国や同盟国による対ロシア制裁の一部を実行したと明らかにした。
Secretmagは「ホワイトハウスの報道官が述べたように、中国当局は米国の制裁を尊重する傾向にあり、西側の圧力に直面するロシアを本当に助けることはないだろう」と指摘した。
(翻訳編集・張哲)
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