アングル:ドイツ銀大リストラ、職場を去る世界各地の社員たち
[香港/ロンドン/ニューヨーク 8日 ロイター] – ドイツ銀行<DBKGn.DE>が7日、株式取引事業の全面撤退を含めた投資銀行部門の大規模リストラによって、1万8000人を削減する方針を打ち出した。これを受けて早くも週明け8日には、世界で最初に営業時間を迎えたシドニーや香港を皮切りに、各地の拠点で対象となった社員が同行のロゴが入った封筒を手渡された後、職場に別れを告げる光景が見られた。封筒には人事部からの解雇通告とそれに伴う具体的な条件が記載された書類が入っていたのだ。
香港オフィスを去ることになったあるバンカーは「何か働き口があるなら教えてほしい」と切実な口調だった。別の3人は、ドイツ銀の看板脇で記念撮影した後、互いに抱き合い、タクシーを拾って姿を消した。
解雇された株式トレーダーは「株式市況はそれほど好調ではない以上、同じ職種を見つけるのは難しいかもしれない。でも何としなければ」と前を向いた。
ウォール街の同行オフィスでは、リストラ対象の社員に対して食堂に集まるよう指示が出された。それ以外の社員は東部時間午前11時半まで食堂は使えないとの通知が、ロビーに掲示された。
複数の関係者はロイターに、食堂で対象者数百人が解雇の事実を告げられるとともに、退職手当に関する詳しい説明を受けたと話した。
解雇された社員の1人はロイターに、数週間前から予想はされていたと打ち明けつつ、「みんな次にどうするか計画を練っていたが、市場環境は厳しい」と不安げだった。
香港のオフィスからリストラされた社員がいなくなってからしばらくすると、英金融街シティーにあるオフィスでも、何人もが会社を去る様子が目にされた。ロンドンはニューヨークと並び、最も削減数が多いと見込まれている。
IT関連の業務に従事していた1人が「けさ解雇された。ごく短時間のミーティングがあっただけだった」と言い残していなくなったのと入れ替わるように、ゼービング最高経営責任者(CEO)がメディアへの説明のためにオフィスに入っていった。
解雇の動きは主要金融センター以外の地域にも広がった。インド・ベンガルールで働く社員は、自分と同僚4─5人が仕事がなくなると言い渡されたと語った。その上で、特に共働きではない世帯の人や、ローンなど多額の借金を背負っている人はかなり絶望的な雰囲気だったと顔を曇らせた。
株式事業で職を失った人にとって、再就職は簡単ではないかもしれない。このセクターは依然として、欧州の当局者が株式取引に新たな規制を課したことによる高コストに苦しんでいるからだ。
コアリションの調査分析責任者で投資銀行業界の動向を追っているジョージ・クズネツォフ氏は「株式関連の労働市場は今後も極めて大きな逆風に見舞われる」と予想。同社の見立てでは、今年の株式セールス・トレーディング収入が世界全体で7─8%減少するとすれば、当然ながら大半のブローカーは新規採用を停止するだろうという。