ニュージーランドのオークランド在住のキャサリーン・ファン・ビークが豪雨の中、道をはって歩くブルースを見た時にはそれが何なのか分からなかった。一瞬、ねずみだと見間違えたほどだった。
びっしょりと濡れている小動物を見てファン・ビークはすぐさまその小さい命を守ろうとした。よく見るとこれは生まれたての仔猫で、まだへその緒がついているのに、母親の気配がなかった。
「それでも私は彼を猫かと疑ったほどです。」ファン・ビークは地元紙に話した。「彼はむしろねずみと言った方がよかった。」
彼女は直ぐにその仔猫を拾い上げ安全で温かいところまで持って行って乾かすことにした。
ファン・ビークは仔猫を自宅で飼うことにし、ブルースと名付けた。ブルースは普通の猫の赤ちゃんと同じように青い目をしていた。
しかし、ブルースが今にも死にかけていたことを彼女は知らなかったのだ。
「生まれたての仔猫の世話の仕方を調べて、多くの仔猫がブルースのような状態から回復することはないと知ったの。」
彼女は必死に看病した。24時間体制で食べ物が与えられるようにし、何度も動物病院に足しげく通った。
その甲斐があって、6週間後、ブルースにようやく回復の兆候が見えた。その頃、彼女はブルースの灰色の毛に変化が生じていることに気付いた。毛の色はどんどん暗い色に変わり、完全に本物の黒猫と変化を遂げた。そして青い目は緑色に変わっていた。
ファン・ビークはこの変容が「フィーバーコート」と呼ばれる状態によるものであることにすぐに気づいた。この「フィーバーコート」とは病気かストレス状態にある母猫から生まれた仔猫に起こる現象だ。その仔猫の毛は灰色だったり、赤みを帯びていたり、クリーム色だったりするが、その色がずっと続くわけではない。
「3か月経つと、彼の毛が真っ黒になった。」とファン・ビークは新聞の取材に語った。
「彼は頭のおかしいティ―ネイジャーみたいにぐるぐる飛び回っていたわ。それでああ、本当に危ない状態から抜け出したんだと思った」
その後、ブルースが灰色の野良猫から黒色の家猫に見違えるような変貌を遂げて、ファン ビークは「ブルース、家を見つける」という題の子ども向けの本を書くことを思いついた。
あらすじで次のように書いた。「初め、ブルースは24時間ミルクを与えなければならないくらいちっぽけな存在だったけど、今や彼は大きくて強く(そしてちょっといたずら好き)になった。」
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