チベット「天空の仏教僧院」ラルンガル、取り壊し急激に進む
中国西部の四川省西部チベット山脈近くにある世界最大の僧院と住居群「亜青寺(アチェンガル)」でこのほど、中国当局による急速な強制取り壊しが進んでいる。8月、海抜4000メートルに1万人の僧侶が暮らしていた一角は現在、何もない空き地になっている。現地情報筋がラジオ・フリー・アジア(RFA)に伝えた。
チベットのある消息筋によると、同省東チベット甘孜(カンゼ)チベット族自治州白玉(バイユ)県にあるアチェンガルは、7月に尼寺の取り壊しが始まり、やがて地域全体の半分近くが取り壊されたという。
アチェンガル地域には、寺院での修行のために河を隔てて1万人以上の僧侶、尼僧が共同生活を送っている。チベット仏教文化を象徴し、少なくとも今年の初めまで外国観光客を受け入れていた。しかし、5月から7000人以上の僧が強制的に退去させられている。
ある情報筋は、「中国当局はアチェンガルのがれきを何日もかけて片付けていた。その空き地には芝生を植えていた」と述べた。
RFAが伝える情報筋の話によると、チベット高僧の抗議により、現在は強制取り壊しが一時的に停止している。しかし、取り壊しが突如、再開される可能性は否定できないという。
情報筋がRFAに語ったところによると、アチェンガルから追放された人々の多くは拘禁され、集中管理施設に収容され、暴行を受けている。
人権組織・チベット人権と民主主義センター(TCHRD)2018年7月の発表によると、チベット仏教の尼僧は収容先で、看守らによる性的虐待を受けている。かつて収容を経験した僧侶が、TCHRDに情報を提供した。
アチェンガルでは中国警察が常時監視しており、地域への出入りは厳しく制限されている。
チベット自治州色達(セダ)県にアチェンガルとそれよりも知名度の高い僧院ラルンガルがある。ここでも、強制取り壊しや僧侶の追放が行われている。
米ワシントン拠点の支援団体「チベットのための国際キャンペーン」によると、2017~18年の間に、少なくとも4820人のチベット人、漢民族の僧侶と尼僧がラルンガルから連れ出され、2001~18年までに7000以上の住居と他の仏教関連施設が取り壊されたという。
(翻訳編集・佐渡道世)