写真は香港の林鄭月娥長官。(郭威利/大紀元)

台湾、香港に殺人事件容疑者の引き渡しを要求 林鄭長官が拒否

香港政府が進めた犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の発端となった殺人事件の容疑者の男は、別の罪で服役中だったが、23日、釈放された。同事件が起きた台湾の蔡英文政権は22日の記者会見で、男の身柄引き渡しを香港政府に求め、香港に捜査関係者を派遣すると発表した。香港側は23日、台湾政府の訴えを拒否した。

男の名前は陳同佳。2018年2月、台湾で、同じく香港出身の交際相手、潘暁穎さんを殺害し、遺体を遺棄したとして、台湾捜査当局は男を指名手配した。男は潘さんを殺害後、香港に戻り、彼女の銀行カードを使って、お金を引き出したことで、香港警察に窃盗の罪で逮捕された。香港の裁判所は今年4月、資金洗浄の罪で男に29カ月の実刑判決を言い渡したが、台湾での殺人容疑については追訴していなかった。

香港当局は、男の刑務所での態度が良好であったため、刑期を短縮させ、今月23日の釈放を認めた。

台湾政府は2018年3月、4月、7月の3回にわたって、香港律政司に対して香港・台湾司法協力制度の確立を促し、同制度による男の身柄引き渡しを求めた。しかし、香港政府は拒否した。今年2月の記者会見で香港政府は突然、「逃亡犯条例」の改正案草案を立法会(議会)に提出すると発表した。

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は19日、陳容疑者が台湾に出頭する意向があると発表したが、台湾政府は「出頭」を受け入れられないとして反発した。

対中政策を担当する台湾の大陸委員会は20日、加害者と被害者が香港市民であるため、香港政府が「司法の管轄権」を有し、同殺人事件を追訴する権利があると強調した。香港側は、香港外で起きた事件について管轄権は及ばないと主張してきた。

また香港は、世界30カ国と容疑者の引き渡しを可能にする「刑事事宜相互法律協力制度」を結んでいる。大陸委員会は、香港側が台湾との司法協力制度の締結を拒むのは、台湾を主権国家として認めていないことが反映したとした。台湾政府が複数回、香港政府に対して香港・台湾司法協力制度について求めてきたにもかかわらず、返答は得られなかった。今回も林鄭長官は答えていない。「陳容疑者の出頭は、ただの政治ショーではないか」と糾弾した。

台湾内政部(省)の徐国勇長官は21日、「香港には死刑制度はないが、台湾には死刑制度がある。陳容疑者が自ら台湾に出頭することを望み司法審判を受けるということに違和感を感じる。香港政府と中国当局に指示された可能性がある」と指摘した。

蔡英文総統も22日、香港政府が同殺人事件に関する司法の管轄権を行使しないことを非難した。

同日、大陸委員会、内政部(省)、法務部(省)は共同記者会見を行い、香港に捜査関係者を派遣し、陳容疑者を台湾に連行する旨を香港政府に伝えたと公表した。

香港政府は23日未明に掲載したニュースリリースで、台湾政府の要求を拒否した。「台湾政府は香港で司法の執行権はない」と批判した。陳容疑者について「釈放された後、自由の身になるため、特別行政区政府は同容疑者に対していかなる強制措置も実施する権利はない」とし、容疑者が台湾に出頭し、台湾捜査関係者が同容疑者を台湾に到着した後に逮捕することはできると主張した。

台湾側は、香港政府の決定について、陳容疑者が今後逃亡し、証拠隠滅を行った場合、「香港政府が全ての責任を負うべきだ」と反論した。

台湾メディア「上報」9月6日付によると、香港と中国当局が「逃亡犯条例」改正案を推し進めた主因は、中国通信機器大手の華為技術「ファーウェイ」の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が昨年12月、カナダで逮捕されたことに関係する。カナダ政府が米政府の要請で「中国の国家機密情報を把握している」孟氏を拘束したのを受けて、「香港に集まる各国の経済界や政界の大物を中国本土に連行することで、米政府らに報復するつもりだった」という。

(翻訳編集・張哲)

 

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