バイデン米大統領は18日、米CBSテレビのインタビューで、中国が台湾に侵攻すれば米軍が防衛すると明言した。台湾の専門家は台湾有事の場合、米軍が台湾を防衛しなければ、バイデン政権の外交政策の柱となるインド太平洋戦略が崩れる可能性があると指摘した。台湾メディア、中央社が19日伝えた。
バイデン大統領はCBSテレビの番組で、司会者に米軍が台湾を守るのかと質問された際、「はい、もし実際に前例のない攻撃があった場合はそうなる」と答えた。これに対して、司会者が「ウクライナとは違って中国の侵攻があった場合は、米軍の兵士が台湾を守るんですね?」と再び問うと、大統領は「はい」と応じた。
台湾政府系シンクタンク、国防安全研究院の専門家である沈明室氏は、バイデン大統領の発言の背景には、8月のペロシ下院議長の台湾訪問や米議会での台湾政策法案の審議、11月の米国中間選挙があると指摘した。同氏は、バイデン政権の台湾政策が「明確になった」と述べ、台湾防衛に関する米国のコミットメントが「以前より強くなった」とした。
沈氏は、台湾海峡問題に関して米国は「現状維持」を望む一方で、中国がますます挑発的になった場合、台湾が主権を守るための行動は「台湾独立」と解釈されてはいけないとの認識を示した。
今月14日、米上院外交委員会は、台湾への関与を強化する「台湾政策法案」を可決した。法案には、台湾を「北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要な同盟相手と同等の形で扱う」との文言が盛り込まれた。沈氏は、この内容は「ある程度、台湾の主権を強調している」と認識した。
台湾国民党のシンクタンク、国家政策研究基金会の掲仲副研究員は「米国が中国による台湾への武力攻撃を座視すれば、(バイデン政権の)インド太平洋戦略は崩れるだろう」と述べ、米国は同盟国から信頼を失う恐れがあると指摘した。
バイデン大統領は今年2月、インド太平洋地域で影響力を拡大する中国に対抗するために、安全保障と経済の面で日韓豪比泰5カ国との関係を強化する「インド太平洋戦略」を発表した。
ただ、台湾と米国の間に「日米安全保障条約」のような共同防衛義務を定める条約が締結されていないことに、掲氏は強い懸念を示した。中国が台湾を攻撃した場合、米国が速やかに出兵できず、軍事行動に慎重な姿勢を見せる可能性が高いため、「介入するタイミングが遅くなるかもしれない」という。
バイデン大統領がこれまでに複数回、台湾有事に関して発言したが、ホワイトハウスやバイデン政権内の高官らはその都度、米国の台湾政策に「変更はない」と声明を出してきた。掲氏は、米政府は台湾政策を巡っては一定の曖昧さを維持し、中国を刺激して台湾侵攻の時期を早めることを回避する必要があると認識しているのではないかと推測した。
いっぽう、大統領は18日のインタビューで「1つの中国政策」に同意し、台湾の独立を奨励していないと話した。ホワイトハウスもその後、CBSテレビに対し「米国の政策に変更はない」と説明したという。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。