イメージ画像。(JOHN MACDOUGALL/AFP/Getty Images)

米CIA元分析官、中国諜報活動の新書で「変節者と妊娠中の妻を公開処刑」

米中央情報局(CIA)の元アナリスト、ピーター・マティス(Peter Mattis)氏と、米シンクタンクのジェームズタウン財団に在籍する学者のマシュー・ブラジル(Matthew Brazil)氏はこのほど、共著『中国共産党スパイ:情報入門(Chinese Communist Espionage: An Intelligence Primer)』を発表した。

同書の前書きは、中国当局がCIAの情報提供者を処刑した場面を紹介した。

「2011年のある日の朝、北京市のある政府機関の職員らが集められて、1人の同僚とその妊娠している妻の公開処刑を見せられた。処刑されたのは米中央情報局(CIA)の協力者だ。2人は政府機関の建物の中庭で銃殺された。銃殺の映像は館内の有線テレビで放送された」

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)10日付によると、今月3日、ジェームズタウン財団で行われた同著書の発行記者会見で、マティス氏は「この本は、半世紀以上にわたる中国共産党のスパイ活動に関する入門書である」とし、「中国は今、世界最大の情報大国となった」と紹介した。

両氏は著書において、中国共産党は、1927年に起きた上海事件(四・一二クーデター)で国民党の諜報活動によって壊滅状態になった経験があるため、CIAの情報提供者に対して公開処刑を実施したと指摘した。同事件をきっかけに、中国共産党はスパイ活動の重要さを認識したという。

米側の工作員の寝返りによって、2010~12年にかけて、中国当局は国内の米スパイ網を壊滅的な状況に追い込んだ。20人以上の情報提供者が中国当局に殺害、または収監された。米司法当局は今年11月22日、当時中国側に米の諜報員リストを提供したCIA元工作員のジェリー・チャン・シン・リー(Jerry Chun Shing Lee)に対して19年の禁固刑を言い渡した。

『中国共産党スパイ:情報入門』は7つの章から構成される。中国の情報機関の組織構造、上層部、幹部、有名な諜報員、重要なスパイ事件、外国での産業スパイ活動などを解説した。

同著書は、中国当局は情報の分析について、「マルクス・レーニン主義の思想」から影響を受けているとの見解を示した。「政策が失敗した場合、何が起きたのかを入念に分析するのではなく、そこに人為的な原因、または外部からの介入があったと考えがちだ」という。

「香港問題で、この特徴がはっきりと映し出された」と、記者会見でマティス氏は述べた。中国当局と官製メディアは一貫して、米政府が香港情勢を激化させた黒幕だと批判してきた。

マティス氏は、欧米諸国の情報機関がプロの工作員を通して諜報活動を行うのと違い、中国当局は民間人を通じて情報収集しているとの見方を示した。しかし、「中国との関わりを持つ人であれば、だれでもスパイだ」という考えについては否定的な考えを示した。この考え方では「リスクを正確に判断できない」とした。さらに、このことよりも注意すべきは、中国の情報活動の規模と将来にもたらす影響は「欧米にとって極めて脅威だ」と述べた。

(翻訳編集・張哲)

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