米財務省、中国の「為替操作国」認定を解除 通商合意の署名控え

[ワシントン 13日 ロイター] – 米財務省は13日、貿易相手国・地域の通貨政策を分析した外国為替報告書を公表し、中国の「為替操作国」認定を解除したと明らかにした。

報告書は公表が遅れていたが、米中両政府による「第1段階」の通商合意署名を15日に控える中、発表された。

財務省は昨年8月、中国が輸出面で不当に優位な競争環境を作り出しているとして1994年以来初めて為替操作国に認定していた。

財務省は最新の報告書で、中国は競争的通貨切り下げ抑制に向けた実行可能な取り組みを約束し、第1段階通商合意の一環として為替相場と対外収支の関連情報開示で合意したと説明した。

中国の劉鶴副首相は13日、ホワイトハウスで行われる通商合意の署名式典に出席するため、ワシントンに到着した。通商交渉に近い筋は、為替操作国認定は中国にとって実際的な影響はないものの、認定解除は中国に対する友好の重要なシンボルになるとの見方を示していた。

財務省は人民元について昨年9月上旬に1ドル=7.18元まで下落した後、10月に上昇し、現在は6.93元近辺で推移していると指摘。「この点において中国は現時点で、もはや為替操作国に認定されるべきではないと財務省は判断した」としている。

ただその上で、中国は持続的な通貨安の回避に向け断固とした措置を取り、長期的な成長見通しをより確実にするため、一段の市場開放を進めるべきだとくぎを刺した。

ロンドンを拠点とする経済政策のシンクタンクOMFIFのアドバイザーで、元米財務省高官のマーク・ソベル氏は、中国の為替操作国認定解除を評価。中国が前回、為替操作国に認定されたことは「(トランプ)大統領の逆鱗に触れたためであり、間違いだった」と指摘した。

同氏は「(前回の中国の操作国認定は)そもそも起こるべきではなかった。中国は為替を管理しているが操作はしていない」と述べた。

同氏は、中国の経常黒字は国内総生産(GDP)に対する比率としては低水準であり、中国はここ何年間も外為市場に介入していないと指摘。昨年8月の為替操作国認定は、市場がトランプ大統領の関税引き上げを予想し、人民元が対ドルで下落した時期だった、としている。

報告書はまた、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、マレーシア、シンガポール、韓国、ベトナムの為替慣行について引き続き懸念されるとして監視対象に指定。新たにスイスも対象に加えた。

とりわけドイツについて懸念を示し、同国政府は減税と国内投資の促進を行う責任を負っているとした。

また、実効レートベースで過大評価されているとの国際通貨基金(IMF)の評価を踏まえ、持続的なドル高に懸念を表明。実効レートは20年間の平均を約8%上回る水準にあり、ドル高の継続は持続的な貿易・経常収支の不均衡を増幅させる見通しだとした。

一方、中国の為替・通商慣行に批判的な米上院民主党のチャック・シューマー院内総務は、中国を為替操作国認定から外したことを厳しく批判した。「中国は為替操作国だ。これは事実だ」と主張。「残念なことに、トランプ大統領は、中国に対する強い姿勢を維持するよりも、習中国主席に屈することを選んだ」などするコメントを発表した。

*内容を追加しました。

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