【紀元曙光】2020年2月4日
いつしか立春になった。今日から春と聞いただけで、わずかながら嬉しい。
▼立春は2月4日だけと思っていたが、年によっては2月の3日にも5日にもなるらしい。世界時の9時間後が日本の時刻になるため、立春のその瞬間が、4日を挟む前後の日付になる場合もあるからだという。
▼袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つ今日の風やとくらむ(古今集)。歌意「夏のころ衣の袖が濡れるほど両手にすくった水も、冬には凍っていた。その氷を、立春の今日の風が解かしているだろうか」。歌人・紀貫之(きのつらゆき)が詠んだ一首は、やわらかな日差しのなかに吹く春風をとらえて、実に心地よい。
▼このまま春の興趣を書きたいのだが、今の情況が筆者にそれを許してくれない。武漢の一般市民は、家族である患者を、連れて行った病院で診てもらえず、「自分の家で隔離しろ」と門前払いされている。老親の高熱が退かず、何度も電話をかけて救急車を呼ぼうとするが、「先に病院の許可を取らないと搬送できない」と言われるだけだ。
▼数日前になるが、北京では生後9か月の女児まで感染したと報告された。完全封鎖された武漢のみならず、すでに中国全土が新型コロナウイルスの汚染地域となっている。人民解放軍も各方面に投入されているが、今回の防疫は、砲火で戦争するよりも難度が高いと言われている。ある兵士は、割り当てられたのは3枚のマスクだけで、鼻孔の部分がもう黒くなっていると嘆く。
▼中国も同じく今日が立春である。この冷たすぎる氷を、どの春風が解かしてくれるのか、前途はまだ見えない。
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