タイ人、中国ネットユーザーを撃退 台湾香港も加勢「中共ウイルスで周辺国が団結」

タイは貧しい(Poor)」「でも中国はプー(Pooh)だ」。ソーシャルサイト(SNS)では、中国のネットユーザーと、タイのユーザーとの間で舌戦が続いている。タイ側には香港台湾の自由民主主義を支持するユーザーが加勢し、中国共産党宣伝部のプロパガンダを打破しようとしている。

発端は、タイ系米国人俳優で「ブライト」ことバチラウィット・チバリーさんが4月9日、日本拠点のタイ人カメラマンが撮影したというシンガポール、東京、香港、上海の「4カ国」の高層ビルの写真を共有したことにある。中国のインターネットユーザーが、中国SNS微博でブライトさんの投稿のスクリーンショットを投稿し、香港を一カ国に数えたことで「中国の国家主権を軽視した」と批判し、謝罪と訂正を要求した。翌日、ブライトさんとタイ人カメラマンは謝罪を表明した。

タイのモデル #nnevvy

中国のネットユーザーの攻撃はその後、ブライトさんの恋人にも飛び火した。ネットユーザーは二人の過去の投稿を槍玉に挙げた。

チバリーさんの恋人である「#nnevvy」こと、モデルのウィーラヤ・スカラム(Weeraya Sukaram)さんは以前、自身の写真をソーシャルサイトに投稿すると、チバリーさんは「かわいい中国の女の子みたいだね」と書き込んだ。スカラムさんは「これは台湾の女の子のスタイルよ」と返信した。

中国ネット工作員は、スカラムさんが台湾を中国の一部と認めていないとして攻撃を強めた。

さらに、彼女が以前、武漢のウイルス研究所に1500種類のコウモリが保管されているという投稿をリツイートしたことから、「スカラムさんが陰謀論を支持している」と中国のネットユーザーは怒りを爆発させた。

中国SNS微博でも、スカラムさんの発言が取り上げられ「ブライトの恋人が中国を侮辱」との言葉が上位にあがり、ブライトさんが出演するタイのTVドラマ『2gether』のボイコットが呼び掛けられ、二人に対する罵声が相次いだ。個人攻撃が過熱して、この論争を利用したタイ人とタイ政府に対する暴言や人種差別的なコメントが噴出した。

中国共産党政権は国際的なネット世論を党都合に合わせて形成するため、海外のソーシャルサイトでも多数のインターネット工作員を活動させている。精神的にダメージを与えて相手を屈服させるのがネット工作員の一般的は戦術だ。攻撃的な中国ネット工作員は「#nnevvy(スカラムさんのネット上の名前)」のハッシュタグを作成して、微博で攻撃を展開した。14日までに144万件以上の投稿があり、46億4000万ビューを記録した。

しかし、この戦略はタイのネットユーザーに対しては失敗しているようだ。タイのネットユーザーたちは相次いで、中国ネット工作員の言動に滑稽な画像を付けたり、ユーモラスに切り返したりした。

「お前たちは歴史を知らないというが、私たちは8964(天安門事件を揶揄)を知っている」

「私たちは貧しい(Poor)が、中国はPooh(独裁体制を揶揄)だ」

「壁を越えてやってくるが、VPN(中国当局のネット封鎖網を突破するアプリ)が切断すると何もできない」

「タイ料理がまずいと言っているが、タイ人はコウモリを食べない」

「台湾と香港を攻撃したければ、まずタイ人を倒してみなさい」

ほかにも台湾や香港、マレーシア、インドなど周辺のアジア諸国との連帯を呼びかける画像コラージュが多数作られ投稿されている。

タイ側の反撃に中国側は罵詈雑言を掛けるほかなかった。

この舌戦に香港や台湾の市民も加勢した。香港の著名な民主活動家ジョシュア・ウォン(Joshua Wong、黄之鋒)氏は「自由を愛するタイの友人のために立ち上がろう」と呼びかけ、「私たちは権威主義に対抗するためのアジアの連帯を築くことができるだろう」と書き込んだ。

タイの民主活動家Netiwit Chotiphatphaisalは、2014年以来、中国共産党がタイを圧迫しているときから、黄之鋒氏は交流を続けてくれていると言及。オンラインでの活動は圧力に対抗できるとし、ハッシュタグを使って声をあげるよう呼びかけた。

この論争は、東南アジアのネット民が台湾や香港のネット民と力を合わせているのを見て、中共ウイルスの出現により、中国の周辺国が団結していると指摘する。「これはタイ人が絡んだ初めてのケースとなる、国境を越えた地政学的ツイッター戦争だ」とバンコクのタマサート(Thammasat)大学のプラジャック・コンキラティ(Prajak Kongkirati)氏は、ロイター通信の取材に述べた。

オーストラリア戦略政策研究所のトレーシー・ビーティー氏は「#nnevvyは、タイと中国の間の激しいツイッター戦として始まったが、現在は香港と台湾を含む外交問題に繋がっている」と同通信に答えた。

(翻訳編集・佐渡道世)

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