ある智者が私に、「長生きの秘訣は多く笑うことだ」と教えてくれたことがある。残念ながら、当時私は幼くてそのことばの意味がよく理解できなかった。大きくなって少しずつ、人は誰もいらいら、失意、悲しみ、苦しみの経歴を持ち、「人生は十中八九、思い通りにならない」ということがわかってきた。
毎日少しでも微笑むというのは、実に難しいものである。人生は順風満帆とはいかないが、困難や挫折に遭ったとき、楽観的で闊達であり、自信に満ちた心理状態を維持することができ、最も苦しいときでも微笑みを忘れることがなければ、平凡な日々を活力に富んだものに変え、重苦しい生活を気楽で活発なものに変え、ときには、苦難の時間を心地良く貴重なものに変えることさえできる。
ユダヤ人で著名な精神分析学者ビクトール・E・フランクル博士はかつて、ナチスドイツの強制収容所でひどい拷問を受けたことがある。その血生臭く殺戮が繰り返される場所では、全く人間性も尊厳も見られず、毎日多くの女性、子供や老人が虐殺で死んでいった。フランクル博士も毎日、極度の恐怖の中で生活し、内心に極めて大きな精神的圧力を受け、巨大な精神的苦しみに耐えていた。
ある日、彼は長い隊列に従って収容所の労働現場へ向かった。途中で何度も幻覚に襲われ、その度に「今晩は恐らく生きて帰ってこられない」と考えた。仕事が半分まで終了した時、彼の靴紐が突然切れた。彼はまた、これは何か不吉なことの前兆だと心配した。頭が混乱していたフランクルは、生活と生命に飽き飽きし始めていたのである。
心を落ち着けるため、彼は瞑想を試みた。自分が今ちょうど、明るく広い教室の中で元気いっぱいに演説をしている場面を想像したのである。彼は目を閉じると、突然心地良さを感じ、顔には次第に笑顔が浮かんできた。それはフランクルが長い間忘れていた微笑みであった。この時、彼はうれしくて自分に、「すばらしい。微笑みを見ることができさえすれば、私は収容所で死ぬことはない。きっと生きて出て行くことができるはずだ」と言い聞かせた。
その後、彼は本当に収容所から出ることができた。彼の姿を見た友人たちは一様に驚いた。彼の顔からは苦しみを受けた痕跡が全く感じられず、かえって全身から青春の活力がみなぎっていたからである。
微笑みは天が人類に恵んでくれた宝物である。微笑むことができさえすれば、状況がさらに悪化することはない。危難に遭った時に笑うことができれば、それはすばらしい知恵である。『三国演義』の中で曹操は、赤壁の戦いに敗れ、八十三万の大軍が周瑜の火攻めに焼き尽くされそうになった。華容道では関羽に遇い、危うく命を落とすところであった。そのような中、曹操は依然として天を仰いで大いに笑うことができた。
日常生活の中で、人は誰も、微笑みをたたえた人を好む。笑顔は人に親しみやすさを与えるからである。いつもにこにこしている人は、普通の人に比べ交際しやすい。微笑み自身が魅力だからである。科学研究でも証明されているとおり、朗らかで、闊達として度量の大きい人は、心が静かで鷹揚であり、往々にして健康で長寿である。
微笑みは全ての憂いを解かす。「酔いは全ての憂いを解かす」と言う人がいるが、それでは内心から本当に解脱することはできないと思う。酒を好む人に私は、「微笑みこそ全ての憂いを解く。なにゆえ美酒を飲まなければならないか?」と言いたい。天を仰いで大いに笑えば、世俗への恐れが消え、功名に対して淡泊となり、生死にこだわらず、心の昇華が生まれる。これこそが微笑みの魅力である。
(明心ネットより転載)(翻訳・瀬戸)
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