【紀元曙光】2020年4月30日

4月末になった。日本の多くの学校は、まだ休校している。

▼生徒が教室に集まるのが「3密」でダメなら、学校教育は成り立たない。若い頃に、小欄の筆者も、高校で現代文や古典を教えていた。黒板にチョークでがんがん書きながら、生徒の目を見、その心に向かって文学の魅力を熱く語った。自分で満足できた授業は1年に何回もなかったが、それが授業だと今も思っている。

▼昨今は、インターネット端末を使ったサテライト授業というのがあるらしい。頭の古い筆者にはさっぱり分からないが、それも授業なのだろう。ただ、目的を特化した予備校ならともかく、小中高の生徒を対象にそれができるのか、筆者には分からない。

▼もっとも今は非常時なので、どんな方法を試してもよいと思う。ただ新年度の4月は、教師と生徒がお互いに初めて出会い、良いクラス、良い対人関係を築いていく第一歩なのだ。「全人教育」という言葉がまだ死語になっていないことを願うが、豊かな情操や道徳の養成も、大切な教育目的であることを忘れたくない。

▼先生だって、教室で生徒の顔を見て授業したいのだ。筆者には痛いほど分かる。学校であれば成績評価をつけなければならないが、はて1学期は、どうするか。部活もできない。インターハイも全中大会も今年は中止に。生徒の命を守るのが第一とは言え、まさに学校教育は四面楚歌。なんという閉塞感であろう。

▼これを機会に「日本の学校も世界標準の9月開始にせよ」という声を聞く。筆者の意見を小欄に書くことは控えるが、おそらく問題の本質はそこではないように思う。

▶ 続きを読む
関連記事
抜け毛や白髪は年齢だけの問題ではないかもしれません。中医学では、髪の状態は「腎のエネルギー」と深く関係すると考えられています。下半身の簡単なストレッチが、髪の健康を支えるヒントになる可能性も。
髪は見た目以上に多くを語ります。ストレスや栄養状態、環境曝露まで記録する“健康の履歴書”としての可能性と限界を、最新研究と専門家の視点から読み解く注目記事です。
「少量なら大丈夫」は本当?240万人を分析した最新研究が、わずかな飲酒でも認知症リスクが高まる可能性を示唆。脳の健康とお酒の付き合い方を見直すきっかけになる一記事です。
「忙しい=充実」と思っていませんか。最新の研究と実体験から、過度な忙しさが心身や人間関係に及ぼす見えない代償を解説。立ち止まることの本当の価値を考えさせられる一編です。
透析は命を救う治療だが、腎臓が本来持つ「回復力」を見えにくくしてしまうこともある。必要な時だけ透析を行う新たな治療法で、回復率が高まったという研究と、透析を離脱できた女性の実体験。