銀河系に存在する宇宙人、もしくは地球外生命体が、私たちの知らない間に地球を訪れていた可能性があるという、驚きの新研究が発表されました。
かつて、イタリアの物理学者エンリコ・フェルミは、地球外生命体が存在して恒星間航行も可能なら、その生命体は「いったいどこにいるのだ」という疑問を抱きました。これが世に言う「フェルミのパラドックス(Fermi Paradox)」です。地球外文明が存在するなら、なぜ今までその文明と接触がないのかという矛盾を示しています。
この「フェルミのパラドックス」を考察し、宇宙人は地球を訪れたことがあるが、遠い昔だったため人類が遭遇していないだけだという可能性を指摘する研究論文が、2019年8月20日、天文学に関する米学術雑誌「アストロノミカルジャーナル(The Astronomical Journal)」に発表されました。
この研究によると、移住のため恒星間を渡り歩こうとする宇宙人は、恒星の動きを最大限利用して時を見計らった戦略的なアプローチを用いている可能性があるということです。
コンピューター科学者でこの研究論文の主著者であるジョナサン・キャロル=ネレンバック氏は、「恒星の動きを考慮に入れないとなると、導き出される結論は、自分の惑星を離れた生命体はいない、もしくは、この銀河系で科学技術文明を持っているのは私たち人類だけという2つのどちらかしか残りません」とビジネス・インサイダーに語っています。
1975年、天体物理学者のマイケル・ハート氏は、誕生から136億年も経過する銀河系で文明を持つ生命体が発見されていないということは存在しないということなのではないかと結論付けた論文を発表しました。キャロル=ネレンバック氏は、ハート氏の論文は銀河系自体の動きを考慮していなかったと主張しています。銀河系自体の動きは、恒星間移動にかかってくる時間に大きな影響を与えるのです。
恒星の周りを惑星が周回するように、恒星系は銀河の中心の周りを周回しています。例えば、私たちが住む太陽系も2億3,000万年をかけて銀河の中心の周りを回っています。
キャロル=ネレンバック氏の研究によると、各恒星系は異なったスピードで周回しているため、宇宙人は居住に適した恒星系が自分たちに近づいてくるのを待っている可能性があり、地球外生命体は人類が誕生する何百万年も前に地球を訪れていたか、まだ地球に到達していない可能性があると言うことです
「居住に適した恒星系は極めてまれなため、それが近づいてくるのを待っている間に文明が消滅してしまう可能性もあります」とキャロル=ネレンバック氏は語っています。
同氏はまた、現時点で思ったような研究成果があげられていないことは宇宙人がいないことを意味するわけではないとも話しています。
「私たち人類は孤独だという意味ではありません。居住に適した惑星は極めてまれで、そこにたどり着くのは極めて難しいということを意味しているだけなのです」
この論文は、銀河系内だけで居住に適した惑星と生命体の存在を探ることは、広大な海でプールほどの範囲だけを探してイルカはいないと主張するようなものだと結論づけています。
地球から30兆マイル離れた惑星に宇宙人が存在する可能性が
いっぽう、ある研究グループにより、地球から30兆マイル(約48兆キロメートル)離れた惑星に宇宙人が存在する可能性が指摘されています。
2019年1月、バーナード恒星の周りを周回する「バーナード星b」という惑星に水があるならば生命体が存在する可能性があるという研究結果が、米ペンシルバニア州にあるビラノバ大学の天文物理学者グループによって発表されました。この恒星は地球から6万光年離れたへびつかい座の中に位置し、すでに発見されている恒星の中で4番目に太陽に近いと考えられています。
この論文によると「バーナード星b」の気温は約マイナス114度で、木星の月である「エウロパ」の状態に近いと言われています。
しかし「バーナード星b」に水があれば、居住に適さない環境下でも地熱によって生活可能な条件が生み出されるのではないかと研究グループは考えています。
「『バーナード星b』の地表温度は、木星の衛星で氷に覆われた表面を持つ『エウロパ』と同じだと考えられています。しかし、潮汐加熱(ちょうせきかねつ:惑星から受ける重力が原因でその周りを周回する衛星内部に熱が発生する現象)の影響で、『エウロパ』の凍った地表の下には液状の海が存在する可能性があります」と述べるのは、論文著者の一人、エドワード・ガイナン氏です。
「地熱があれば、地表の下に居住可能な領域を作り出せるでしょう。南極で地表の下に湖が発見されているのと同様の原理です」とガイナン氏は話しており、地熱の影響で海が形成されていれば、原始的な生命体が存在できるのではないかと主張しています。
地球外生命体は存在するのか、宇宙人は地球に到達しているのか。壮大なテーマの研究は、これからも続けられていくでしょう。
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