1日平均60分の運動習慣が推奨されているものの、それだけの時間を確保できないという人も多いはず。それがわずか15分~30分でできる高強度インターバルトレーニング(HIIT)が人気を得た理由の1つかもしれない。
HIITトレーニングは短時間ではあるものの、多くの研究結果によれば長時間のトレーニングと同等の効果が得られることがわかっている。
高強度インターバルトレーニングにはクロスフィットやタバタ式などさまざまな種類がある。しかし最近のトレンドは「できる限り多くの回数(ラウンド数)」を表す AMRAP だ。AMRAP の効果を具体的に示す研究はほとんどないものの、HIIT の効果に関する研究によれば短時間だが適応性のあるこの運動法も同様の健康効果をもたらすと考えられる。
AMRAPトレーニングは時間を基準としている。設定した時間内にできるだけ多くの回数またはラウンド数のエクササイズを行う。たとえば、腕立て伏せ10回、クランチ10回、ジャンプスクワット10回をこの順番で時間内にできるだけ多く繰り返す。よりシンプルに1つの運動(バーピー等)を60秒間できるだけ多く繰り返すのも良いだろう。決められた時間制限はなく、運動レベルに合わせて内容を調整することもできる。
ただし、ほとんどの AMRAPトレーニングは5~30分間で各運動後の休憩はない。
タバタ式(通常20秒間激しい運動を行い、10秒間休むサイクルを8回繰り返す)はわずか4分間のトレーニングだが、8週間にわたり24回の運動セッションを行った結果、人間の有酸素運動レベルが18%上昇したことが明らかになった。有酸素運動レベルには循環器疾患に対する強い保護作用があるため、これはとても重要だ。これらの研究において、有酸素運動レベルは高強度の運動中に人が体内に取り込むことのできる最大酸素量(VO2max)で定義されている。
最近、人気が急上昇しているAMRAPトレーニングだが、決して新しいものではない。この形式のトレーニングは高強度のサーキットトレーニングとして何十年も行われており、最近ではクロスフィットによって広く知られるようになった。AMRAPトレーニングの効果を具体的に調査した研究は比較的少ないが、HIITが血圧、血糖コントロールの向上、および体脂肪の低下に効果があるとする有力な証拠がある。
また、HIIT後の有酸素運動レベルの向上は、運動量が大幅に少ないにも関わらず、ランニングやサイクリングなどの持久力トレーニング後に見られるものと同等かそれ以上である。有酸素運動レベルは私たちの健康において大変重要であり、我々が行う運動の総量よりも大切だとも言える。
強度を上げる
HIITが効果的だと思われる主な理由は、グリコーゲン分解というプロセスを通じて筋グリコーゲン(筋肉に蓄えられる糖の一種)を急速に使用することだ。研究によれば、サイクリングマシンで HIITを行なっている間、グリコーゲン分解の割合が体への「合図」として機能し、健康状態や運動機能を高めるとされている。
要するに運動の強度が重要なのだ。
AMRAPトレーニング後に同様の働きが発生するかは定かではないが、特に運動が高強度で行われる場合には同等であると考えるのが妥当だろう。実際にクロスフィットではさまざまな運動レベルの人々の有酸素運動レベル、有酸素能力、および身体組成(体脂肪の低下と筋肉の増加)が改善することが示されている。
しかし、AMRAPトレーニングには欠点もある。それは運動の強度が多くの人々、特に運動不足の人や長期的な病気を患う人にとって困難または不適切な場合があることだ。また高強度の AMRAPは身体的に困難な場合があるため不快に感じやすく、この種の運動の継続を妨げる要因となる。
タバタ式トレーニングは参加者にとってあまり楽しいものではないとされており、その他のHIITも中強度のトレーニングに比べて不快感が高い。他のトレーニング同様、AMRAPの効果も継続して行なった場合にしか見られない。
しかし私たちの研究において、負荷を減らしたHIITではトレーニング中の不快感を軽減できることがわかった。このHIITは高強度の運動に費やす時間を短縮することで取り組みやすい内容となっている。ただし運動量と強度のバランスを取ってもHIIT後に同様の健康効果が得られるかどうかはわかっていない。
高強度の運動はまた怪我のリスクも懸念される。最近の報告ではクロスフィット中に負傷した人の数が極めて多いことがわかっている(参加者の19~74%)。その多くが肩または腰の怪我だ。AMRAPの制限時間内に決められた運動をクリアするという課題はテクニックの低下を招き、特に経験の浅い人たちの怪我のリスクを高める可能性がある。
定期的な高強度トレーニングは横紋筋融解症を引き起こす可能性もある。リスクは低いものの、筋肉の損傷がカルシウム濃度を高める、稀だが危険な状態だ。
AMRAPトレーニングは用途が広く、幅広い運動レベルや環境に適応することができる。たとえば、自宅で自体重エクササイズのみを行っても良いのだ。運動強度を変更して続けやすくすることもできるが、大幅な健康効果は期待できないかもしれない。
使い古された言葉かもしれないが、最善の運動はあなたが行う運動だ。AMRAPが効果的な人もいるが、すべての人に効果があるとは限らない。良い運動法と適切な負荷、そしてルーティンを守ることが成功への道だ。
マシュー・ヘインズ氏は、英ハダーズフィールド大学のスポーツ、運動、栄養学部の学部長を務める。本記事は The Conversation で公開された。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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