歴史には、現在の価値基準では到底はかれない「その時」がある。
▼現在しか知らない人間が自国の先人を批判することは、実は自身を否定していることにもなるのだが、多くの場合、当人は気づいていない。どの時代の人も、「その時」を懸命に生きた。日本の先人も同様である。隣国から理不尽なことを言われて「何でも日本が悪うございました」では、正常な外交関係は構築できない。
▼一方、自覚としての厳しい目は持ちたいと思う。人には必ず「その時の無知」がある。小欄の筆者は、中国共産党を完全否定して斬り捨てるが、そうした知識を初めから有していたわけではない。マオイストでも中共シンパでもなかったが、そのままの中国を無批判に受け入れていた。そんな昔の自分を、今の自分が恥ずかしく思っている。
▼1971年10月25日、第26回国連総会で重大な決議が採択された。通称「アルバニア決議」。これにより国連における中国の代表が、従来の中華民國(台湾)に替わり、新たに中華人民共和国(大陸)と定められた。国連安保理常任理事国の座も、大陸の中国にまわってきた。アルバニア人民共和国(当時)が中国共産党の走狗となって奔走した成果だが、毛沢東の死後、アルバニアは一転して反中となる。
▼このア決議に、日本は反対票を投じた。米国も同じく反対。しかし賛成76、反対35、棄権17で可決成立した。
▼人類の歩んだ歴史を否定するまい。しかし「その時の無知」に対しては「現在の修正」がなされて然るべきである。ナチス以上の非人道的国家に、その地位を与えてはならぬ。
【紀元曙光】2020年10月25日
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