焦点:弾劾裁判で民主・共和党間に深い亀裂、新政権運営に支障か

[ワシントン 14日 ロイター] – 米上院は13日、連邦議会占拠を巡るトランプ前大統領への弾劾裁判で無罪の評決を下した。しかし民主、共和両党の間には深い亀裂が残り、バイデン新政権の政策運営に支障が生じる恐れもある。

弾劾裁判は有罪支持が57票、無罪が43票。共和党から7人の造反議員が出たが、有罪に必要な出席議員の3分の2に届かなかった。

共和党では評決後、今後の党運営を巡って内紛が発生し、有罪を支持した一部議員が地元選挙区の党組織からすぐさま批判を浴びる事態となった。

トランプ氏に近いリンゼー・グラム上院議員は14日のフォックス・ニュースで、トランプ氏の下で共和党を結束させていくことについて前日同氏と話し合ったことを明らかにした。「トランプ氏は先に進み、共和党を再建する用意ができている。2022年(の中間選挙)にわくわくしている」と言う。

一方、有罪投票を行ったビル・カシディ上院議員の地元ルイジアナ州の共和党組織は13日、同議員の問責決議を採択。カシディ議員は14日にABCの番組で、事実が分かれば自分の意見に賛同する有権者が増えるだろうと述べた。

ペンシルベニア州共和党議長のローレンス・タバス氏も、やはり有罪を支持したパット・トゥーミー議員を批判した。

共和党内部からは上院トップのマコネル院内総務など一部議員から、議会占拠事件の際のトランプ氏の行動を批判する声が上がったが、こうした議員は無罪を支持した。マコネル氏は13日、トランプ氏には道義的な責任があると述べたが、大統領を退任しているため有罪には投票しなかったと説明した。

カシディ議員はトランプ氏が刑事責任を問われるべきかとの質問への返答を避けた。しかし民主党のクリス・クーンズ上院議員はABCの番組で、トランプ氏は刑事、民事の両面でさらに責任を問われる可能性があると述べた。

クーンズ議員は、2001年9月11日の米同時多発攻撃のときのように、調査のための委員会を設置すべきだと主張した。ただ、他の民主党議員と同様に、弾劾裁判に証人を呼ばないと決めた決定は正しいとした。民主党のクリス・マーフィー上院議員はCNNの番組で、証人を呼ぶと弾劾裁判が数週間長引き、有罪支持の共和党議員の一部が無罪支持に転じる恐れさえあると述べた。

<民主主義はぜい弱>

バイデン大統領は弾劾裁判後に声明を出し、「この野蛮な闘いを収め、ほかならぬわが国の魂を癒やす」ために結束しようと呼びかけた。一方、トランプ氏は下院の弾劾訴追と上院の弾劾裁判は「魔女狩り」だと訴えた。民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、弾劾裁判で無罪を支持した共和党議員を「臆病者」と呼んだ。

バイデン大統領は弾劾裁判の過程でおおむね民主、共和両党のさや当てから距離を置いてきた。バイデン氏は1兆9000億ドル規模の追加経済対策法案の議会通過と一部閣僚人事の議会承認を目指している。しかし議会内の不協和音がすぐに収まることはなさそうだ。

有罪を支持した共和党上院議員7人のうち2022年に再選を目指すのはリサ・ムルコウスキ議員(アラスカ州)のみ。他の6人は引退するか、もしくは改選時期がずれている。

ムルコウスキ議員は14日、トランプ氏の行動が弾劾に値しないなら「いったい何が値するのか想像できない」とツイッターに投稿し、有罪支持は正しかったとの考えを示した。

トランプ氏は無罪を支持しなかった共和党議員に対して、予備選で対立候補を支持し、追い詰めると繰り返し脅している。13日には自分の政治的な将来について考えていると示唆したが、具体的なことは示さなかった。

(Jeff Mason記者、Susan Cornwell記者)

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