USTR代表候補タイ氏、中国に通商合意守らせる方針 「関税は正当」

[ワシントン 25日 ロイター] – バイデン米大統領が通商代表部(USTR)代表に指名したキャサリン・タイ氏は25日、上院財政委員会の指名承認公聴会で証言し、各種関税措置を通商政策の「正当な手段」として支持したほか、中国には米国との通商合意を守らせると強調した。

上院はタイ氏の指名を承認する見通し。

タイ氏は公聴会で、貿易ルールがあいまいな「グレーエリア」を中国が悪用しているとし、これをなくすために国際貿易ルールを見直すべきと提唱。労働条件や環境の悪化につながる「底辺への競争(race to the bottom)」をやめるべきだと訴えた。

同氏は「長年にわたり、われわれの通商政策は国家が互いに貿易を拡大するほど貿易が自由化され、さらなる平和と繁栄がもたらされるとの前提に基づいていた」とした上で、しかしこれまでの貿易自由化はかえって衰退や労働条件や環境基準の低下を招くことが多かったと指摘した。

タイ氏はトランプ前大統領の「米国第一」の通商政策を否定しなかったが、投資と貿易を通じて米国民の生計を守ることを目指す「労働者中心の」貿易モデルに改良すると述べた。

中国については「国家が経済を主導できる中国は極めて手ごわい競争相手」だとし、中国の戦略と野望に対抗するために、米国は投資、サプライチェーン強化、貿易をより戦略的に行う必要があると述べた。

また、「中国には履行すべき約束がある」と語り、2020年1月に結んだ第1段階の米中通商合意を順守しなければならないと述べたが、具体的な対応には触れず、新たな関税発動にも言及しなかった。

米国は他国と協力し、中国に構造的変化を求めるための新たな選択肢を模索すべきだとした。

タイ氏は、鉄鋼とアルミニウムに対する関税について問われると、関税は「正当な手段」ではあるが、こうした金属の世界的な過剰生産能力という核心的問題を是正するために、あらゆる通商政策手段が必要とされると述べた。

トランプ前政権下のライトハイザーUSTR代表の首席補佐官を務めたジェイミーソン・グリア氏は、タイ氏の関税への見解について前政権のスタンスを維持するものと指摘。「きょうの証言からは、バイデン政権が関税を道徳の問題とみなしていないことが明白だ。関税は行使され得る手段だ」と語った。

タイ氏は公聴会で、米国の知的財産権のより良い保護には、トランプ前政権が中国との関税戦争で利用した通商法301条のほかに法的手段が必要になると発言。

また、中国の新疆ウイグル自治区での強制労働に対する判断が優先事項だとし、「強制労働はおそらく底辺への競争の最たる例」だと述べた。

バイデン大統領の通商目標の達成には、国内サプライチェーンの強化に加え、競争力向上のための人材やインフラへの投資が不可欠だとした。

米国が途中で離脱した環太平洋連携協定(TPP)への直接復帰については、状況が大きく変化したと述べ、否定した。ただ、米国はアジア諸国と貿易で協力するとし、世界貿易機関(WTO)の効率化にも取り組む方針を示した。

北米の新貿易協定「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」については、履行を優先すると述べた。

*内容を追加しました。

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