誰もが見る夢には、一体どのようなメッセージが込められているのでしょうか。現代医学では、一般的に夢を心理学の角度から分析しています。一方、漢方医学では、心理的な要素以外に、臓腑の生理、病理状態が夢に反映すると考えられています。
夢と臓腑の病状の関係については、約2千年前の漢方医学の古典『黄帝内経』に、かなり詳しく記載されています。
それによると、体内に陰(いん)(※)の邪気が強ければ、恐れながら大きな川を歩いて渡る夢を見、陽(よう)(※)の邪気が強ければ、大きな火事に巻き込まれる夢を見ます。陰と陽の邪気がともに強ければ、互いに殺し合う夢を見ます。
さらに邪気が上半身に強ければ、飛ぶ夢を見、下半身に強ければ、高所から落ちる夢を見ます。お腹が酷く空いていれば、人のものを取る夢を見、過剰な満腹状態であれば、人にものを与える夢を見ます。
強い邪気が臓腑に侵入した場合、侵された臓腑によって、異なる夢を見ます。肝臓は怒る夢、肺臓は恐怖で泣き、飛ぶ夢を見ます。心臓は怖がり、笑う夢です。脾臓の場合は、楽しんで歌い、体が重くて動けない夢です。腎蔵なら、腰を怪我する夢などがあります。
また、臓腑が虚弱になっていて、邪気に乗じられている場合には、病む臓腑によって、それぞれ異なる夢を見ます。例えば、肝臓なら、山林樹木の夢を見、胃なら、飲食している夢です。腎臓なら、深い水溜りや水の中に漬かっている夢などを見ます。
このように、漢方医学では、患者が見た夢から身体の状態を判断することができます。漢方医学の診察では、時間をかけて患者の訴えをじっくりと聞く必要があるのです。
*1-陽と相対する事物の属性(斂・降・収・蔵・暗・静・寒・濁など)を示す概念
*2-陰に相対し、一般に、事物の亢進・運動・昇散・光明・温熱などを示す概念
(漢方医師・甄 立学)
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