失業者(左)「ご飯を食べる術がほしい」、農民・直訴者(右)「農地を返してくれ」、党の番犬であるメディア「わが党は一貫して正しい」(挿絵・大紀元)

【党文化の解体】第3章(5)

1.宣伝機関総動員で党文化を押し広める

2)主要な宣伝機関

 (2)放送、テレビ、インターネット

 新聞や雑誌をしっかりとコントロールする以外に、中共は新式のメディアも非常に重視している。ラジオ、テレビや、インターネットのような新メディアもすべて、中共の手に掌握されている。2003年5月、「中国新聞出版」に公表された数字によると、2002年の時点で中国にはラジオ局が306社、テレビ局が360社、ラジオ・テレビ局が1300社あり、ラジオ放送の人口カバー率は93.21%に、テレビ放送の人口カバー率は94.54%に達した。調査によると、15才から64才の都市住民のうち、90%近くが毎日テレビを視聴しているという。完全に新聞や雑誌に取って代わることはできないが、テレビやラジオ放送による党文化の宣伝力は、すでに新聞と雑誌の効果を超えている。

 今40歳以上の人は、文革時期には都市か農村を問わず至る所で、大音量のスピーカーで「最高の指示」や長編の政論が放送されていたことを覚えているはずである。文革後、アナウンサーの声のトーンは下がったが、「政治的な意識」は少しも下がることがない。ただ、更にすぐれた技術を駆使して、比較的人々に受け入れられやすい方法で党文化を宣揚するようになっただけである。

 テレビはメディアとして、具体性や直観性があり、情報の伝播量が大きく、強い臨場感を与えることができることから、視聴者に対する影響力は極めて大きい。1979年以降、中国ではテレビ事業が急速な発展を遂げた。中共はこの宣伝方式をしっかりつかみ、党文化を宣揚するテクニックもテレビ技術の進歩につれて向上してきた。

 放送番組の大部分は、異なった方式で党文化の内容を宣揚している。テレビを例にすると、1978年1月1日に始まった「新聞聯播」という番組は、中共の作り事を宣伝する最も重要な手段である。30分間の番組で、数十年来同じパターンで行なわれてきた。最初の25分間は例外なく、中共のさまざまな大会が盛大に開会されたとか、中央指導者が誰それと会見したとか、地方政府が中央の指示を深く理解し徹底的に実施したとか、中共の輝かしい歴史や偉大な業績を紹介したりする内容である。人々は最後5分間の国際ニュースしか見るものはないと言っているが、実はこの5分間の報道内容も、中共が恣意的に編集し歪曲して、視聴者を誘導する宣伝物である。

 特定の問題を取り上げる「焦点訪談」(ニューススポット)、トーク番組の「実話実説」(本当のことをありのままに言う)、ドラマの「生死抉択」(生死の選択)、娯楽番組の「春節聯歓晩会」(お正月の総合芸能ショー)などは、全部苦心して設計されたもので、大衆の歓心を買う一方、党をも満足させなければならない。大衆の歓心を買うのは手段であり、党を満足させるのは目的である。

 中央テレビ局の「焦点訪談」は、かつて「ずばり指摘する」という誉れを得たが、ある視聴者に言わせると、「『焦点訪談』は、始まった当初は高射砲で蚊を打つようであり、今は顕微鏡で細菌を探すようなものだ」と言う。即ち、重大な事件にはまったく触れず、深刻な事件を小さな問題として軽く報道するのである。

 中央テレビ局のある職員は自嘲しながら、「我々は党の犬で、党の玄関に座っている。党が誰それを噛めと命令したら、私たちはその人を噛むし、何回噛めと言われたら、その回数だけ噛む」と話した。ドラマももちろん党の天下で、反腐敗劇や改革劇、ヒューマンドラマ、時代劇などすべてが、心から党を愛する、党を理解する、党を信じる、党を許すなどの内容を宣伝している。

 例えば、反腐敗劇はすべて同じパターンである。つまり、腐敗しているのはすべて副長や下級の人々で、党の事業に何らかの損失をもたらし、「党と民衆の関係」や「幹部と民衆の関係」に影響を及ぼしたが、肝心な時に、党の化身であるトップの役人や「正義」の上司などが毅然として勇敢に立ち向かい、汚職官吏を処罰して対立を解消し、党のためにメンツを挽回するというものである。

 現実生活の中では、腐敗しているのは副長や下級官吏だけでないことは、誰もが知っている。もし下級官吏が国庫を「蚕食している」というならば、上級官吏や太子党(※)たちは国庫を「貪っている」と言っても過言ではない。それにもかかわらず、スクリーン上で生き生きと演じられている清廉潔白な官吏のイメージは、やはり視聴者を深く「党の良い幹部」に対する期待に浸らせることになる。

 

失業者(左)「ご飯を食べる術がほしい」、農民・直訴者(右)「農地を返してくれ」、党の番犬であるメディア「わが党は一貫して正しい」(挿絵・大紀元)

1983年から始まった「春節聯歓晩会」(日本の紅白歌合戦のようなもの)は、中共が文芸の形式を通して党の文化を押し広める手段の集大成である。歌や踊り、漫才、寸劇、司会者の解説、祝電の朗読、海外駐在中国大使館に招集された留学生からの新年の挨拶などが織り交ぜられるのだが、それらは、「党」と国家、「党」と民族の概念を故意に混交し、人情、民族感情、愛国心を使って、より強固に国民の魂を支配しようとするものである。

 東北なまりや西北なまりの寸劇の中で、登場人物は「党の敵」に泥を塗るほか、自分たちの人生の苦難を笑い、自らを欺き人をも騙す凡人像を作りあげる。社会や政治問題の原因に触れず、観衆の注意力を自虐的な笑いに引き寄せて、まるで全世界の人々がこうした低俗な人物であるかの如く演じていた。こうして、中共統治下の道徳的堕落の現実を隠蔽しようとしている。

 中国大陸では、2004年に7万4千件の集団抗争事件が発生した。四川省漢源で起きた大規模な農民抗争流血事件、エイズ村の悲惨な状況、黄河の水源の枯渇、淮河の深刻な汚染による河川機能の喪失、多発した鉱山事故による多くの被害者、相次いで起きた天災……。このような状況にあっても、その年の「春節聯歓晩会」は「盛世の大交歓」と名づけられた。まったくもって、「徹底的に欺く」という流行語に言われた通りだった。

 インターネットの普及により、党文化の統制的な宣伝方法が不利な状況に置かれた。これに対して、中共当局はインターネット情報を封鎖し、党が禁止した言論が広く伝わらないように対策を採った。中共のインターネット管理方式としては、主に海外ネット情報の封鎖、国内のウェブサイトの閉鎖、インターネット作家の逮捕、電子メール検閲、インターネット監視の特殊警察人員の養成と配置などが含まれる。

 全方位のインターネット監視を実現するために、1998年に着手した「金盾プロジェクト」が2006年までに完成した。この大掛かりなネットプロジェクトに初期段階だけで8億ドルが投入された。このプロジェクトは名目上、公安のオートメーションシステムと言っているが、実はネットの全方位監視と封鎖システムである。これは国家の技術、行政、公安、国安(※)、宣伝など多数の部門が関わるプロジェクトである。

 ネット世界に見られる豊かな情報は、多くの中国人に「言論の自由」といった錯覚をもたらしたが、実は、人々に見えているのは、すべて中共が彼らに見させたものである。中共が彼らに見せたくないものを、中国の人々は見ることができない。中共に都合のいいうそは自由に流されるが、真相は極力覆い隠されている。これこそが中国のインターネットの実体である。

(※)太子党(たいしとう:中国共産党高級幹部の子弟)

(※)国安:国家安全局、国家の情報機関

 

(右)「ダイナミック・インターネット・テクノロジー社 (DIT社)が提供する『フリー・ゲート( FreeGate)』を使えば、ネット封鎖を突破できるよ!」、(左)「インターネットで海外のニュースやテレビが見られるんだ!」、(中)ダイナミック・インターネット「インターネットに国境はない。世界中のことを知ることができる」

(続く)

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