習近平が来年党大会で退任か再任か 憶測飛び交う 学者「現制度では後継問題を解決できない」

中国共産党は来年秋に第20回となる党大会を開催する予定。その時、69歳になる現国家主席の習近平氏は10年の任期満了を迎える。習氏の今後をめぐって様々な憶測が飛び交っている。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のジュード・ブランシェット氏と豪シンクタンク、ロウイー国際政策研究所のリチャード・マクレガー氏は、このほど発表した共同報告書で、党大会後の習近平氏の動きについて幾つかの可能性があると述べた。トップからの退任、3期目ないし4期目の再任、反対勢力による政変、死亡などが挙げられた。

米国の中国研究の第一人者、ニューヨーク大教授のジェローム・コーエン氏は、習氏が直面している最大の問題は政敵による政変ではなく「その強硬な外交政策」だと主張した。

「問題が起きなければ、習氏はあと20年間、トップの座に留まることも可能だ」とした。「しかし、台湾問題で判断を誤れば、権力を失うことになる」との見方を示した。「中国が不安定な状況にならないよう、外交政策に人一倍の注意を払う必要がある」と警告した。

一方、コロンビア大学政治学教授のアンドリュー J. ネイサン氏は違う見解を示した。「習近平氏は外交問題には実に慎重な注意を払っている。南シナ海では勢力を拡大したが、戦争を起こさなかった。台湾に長年、圧力をかけてきたが、戦争には至らなかった。インドとの衝突も小規模で収まった」とサラミ戦略を通じて少しずつ目標に近づく手法をとっていると指摘し、外交問題で失敗する可能性は低いとみている。

「現制度では権力闘争を防ぐことができない」

米国の中国問題専門家によれば、中国の政治制度が指導者の後継問題に対処できないため、憶測を誘発したと指摘している。

米クレアモント・マッケンナ大学の政治学者、ミンシン・ペイ(中国名・裴敏欣)教授は以前、公開セミナーの際に、中国国家主席の任期は「2期10年まで」「最高指導部メンバーは党大会のとき67歳なら留任、68歳なら退任」とする規制は「表面的な制度」に過ぎず、これらの規則が後任の指導者によって破棄されるのを防ぐ効果的なメカニズムがないことを指摘していた。

1980年代、当時実権を握っていた鄧小平氏は規制の導入を主導した。

「鄧氏とその同僚がこの制限を設けたとき、毛沢東時代とその後の政治混乱の再発を防ぎたいという強い動機があった。なぜなら、彼らは毛沢東による独裁統治の犠牲者だからだ」とペイ教授は3月にスタンフォード大学ラリー・ダイアモンド(Larry Diamond)教授との対談の際に語った。

「しかし、鄧小平氏らにも私利私欲がある。自身の権力を維持するために、制限を導入しても、強制力が伴っていない」

「中国の制度には正常な法執行を保障するメカニズムがない。指導者の継承においても同じだ」とペイ教授は指摘した。

ペイ教授はさらに、「中国はほとんど、『表面的な制度化』と呼ぶ段階にあると言える。中国は正常な権威主義体制のように見えるが、習氏の台頭は、これらの制度的メカニズムが機能するかどうかを検証するテストだった。そして今、それが機能していないとわかった」と述べた。

習近平氏は2018年、国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正をした。

ペイ氏は「レーニン主義体制もこのようにして確立した。つまり、実際にその内部には、スターリン、毛沢東、習近平のような人物の台頭を防ぎ、権力の均衡を保つための効果的なメカニズムがないということだ」と述べた。

同氏は昨年の世界民主主義に関する年次講演の中で、「習氏が国家主席の任期制限を撤廃した後、共産党上層部では後継者をめぐる争いが顕在化している」

「習氏は今、潜在的な手ごわい競争相手を恐れ、実力のない忠実な支持者だけ後継者にしようとしている」

「しかし、スターリンや毛沢東の死後の歴史的経験からわかるように、後継者は権力闘争を発動する確率が高いことがわかっている」などと指摘した。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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