中国・雲南省の鉱山、新型コロナ起源探しで注目

[上海 9日 ロイター] – 米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、2012年に中国・雲南省の鉱山で作業後に体調が悪化した作業員6人の情報を公開するよう中国に求めており、新型コロナウイルス感染症(COVID─19)の起源を探す上で重要な取り組みの1つとして注目を集めている。

これらの作業員は年齢が30歳から63歳で、12年4月にこの銅鉱山でコウモリのふんの除去作業を行った。数週間後に、しつこい咳や高熱、頭痛、胸の痛みなどの症状により、雲南省の省都・昆明の病院に入院。最終的に3人が死亡した。

問題の鉱山がある中国南西部の墨江は、新型コロナウイルス感染症が最初に見つかった武漢から1500キロほど離れている。

<作業員6人について分かっていること>

6人の経歴の詳細は不明だが、昆明医科大学の大学院生Li Xu氏が13年に執筆した論文で姓、年齢、診断書の内容などが明らかになった。

Li氏の調査結果は中国の学術論文のアーカイブ「cnki.net」で今でも閲覧可能で、6人各々の症状を分析し、キクガシラコウモリから「SARS(重症急性呼吸器症候群)に似た」コロナウイルスに感染したと結論付けている。

科学者らが12年末に再びこの鉱山を調査し、「墨江ウイルス」として知られるようになった病原体のサンプルを見つけた。この病原体はネズミで見つかり、COVID─19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS─CoV─2)とは無関係だった。その後の調査では、この病原体が作業員6人を発症させたのかどうかは確認できなかった。

中国におけるコウモリのウイルス研究の第一人者である、武漢ウイルス研究所の石正麗氏によると、作業員で見られた肺炎に似た症状は真菌感染によって引き起こされた。また石氏らのチームが昨年11月に発表した報告によると、患者4人の血清サンプル13検体を再検査したが、新型コロナウイルスに感染した証拠は見つからなかった。

<注目される理由>

昨年半ば以降、Li氏の論文がインターネット上で広がり、新型コロナウイルスに非常によく似たコロナウイルスが12年初めの時点でヒトに感染していたことを示す証拠とされている。

この論文は、武漢ウイルス研究所が「RaTG13」など墨江の鉱山で見つけたウイルスについて機能獲得実験(毒性や感染力を高めるための研究)を行っていたとする、広く流布している疑惑を裏付ける状況証拠だと信じる人々もいる。

石氏などが20年2月初旬に公表した論文によると、RaTG13が最初に見つかったのは16年で、遺伝子配列が新型コロナウイルスと96.2%共通している。この論文が発表されたのは、武漢で最初に新型コロナウイルス感染症が特定されたわずか数週間後のことだ。

<他のウイルスも見つかったのか>

武漢ウイルス研究所の研究者は12年から15年にかけて、この鉱山とその周辺で293種類ものコロナウイルスを発見した。

同研究所は昨年11月、この場所から採取した8種類の「SARS型」コロナウイルスの存在を明らかにした。

石氏ら研究者は先月の査読前の論文で、この8種類のウイルスの中にRaTG13よりも新型コロナウイルスに近いものはなかったと指摘した。重要なことは、この8種類のウイルスはいずれも、新型コロナウイルスが効率的にヒトへ感染する鍵となる受容体結合ドメイン持っていなかったということだ。

論文は、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から流出したという主張を裏付ける「実験的証拠」はないと結論付け、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の発生源をより深く理解するためには、「コウモリやセンザンコウなど中間宿主と考えられる動物を、より体系的、長期的にサンプリングする必要がある」と訴えている。

David Stanwa

関連記事
5月14日(火)、ドナルド・トランプ前大統領のニューヨーク裁判が行われているマンハッタンの裁判所の外で行われた短い記者会見で、マイク・ジョンソン下院議長(ルイジアナ州選出)は、この訴訟を「司法の茶番」と強く批判した。元訴訟弁護士で、現在共和党の最高位議員であるジョンソン氏は、この訴訟と米国の司法制度への広範な影響に憤りを表明した。彼はトランプ大統領に直接電話し、裁判に出席したいと伝えたという。
5月14日、バイデン政権はトランプ前大統領の元顧問スティーブ・バノン氏に対する実刑判決の執行を連邦判事に求めた。バノン氏は2022年に議会侮辱罪で禁固4カ月の判決を受けたが、判決を不服として控訴したため、刑は保留されていた。しかし現在、司法省は「もはや『判決を覆すか新しい裁判を命じることになりかねない法律上の実質的な問題』は存在しない」とし、バノン氏の主張をすべて退けた。
全米の大学キャンパスなどで頻発している活発なパレスチナ支援デモに、中国共産党と関連のある団体が資金提供していることが明らかになった。「2024年米大統領選に向けて不安をあおり、若者を過激化させ、米国を不安定化させることが目的」と分析している。
国際人権NGO アムネスティ・インターナショナルが最近発表した報告によると、中国や香港出身の留学生が海外で人権活動に関わった場合、その家族が中共による脅迫や報復を受ける事例があることが指摘された。このような中共の国際的な弾圧の実態が、再び世界の関心を集めている。
2020年以降、香港の自治が中国共産党によってさらに侵食されつつあるため、ワシントンは香港に対する政策を見直すよう求められている。米国のシンクタンクである「戦略国際問題研究所(CSIS)」は5月7日、「2020年以降の香港の自治権の侵食」というタイトルの報告書を公開した。同報告書は北京による香港支配の拡大を明確に描き、米国政府に対香港政策の見直しを促す40ページに及ぶ調査結果を発表した。