2020年2月25日、北京市の男性市民1人が新型コロナウイルスの感染拡大で倒産したカラオケボックス前に座っている(GREG BAKER/AFP via Getty Images)

中国、カラオケボックスにも検閲強化 「国家統一に危害を加える」歌を禁止

中国当局は国民の思想・文化への統制を強めている。文化観光部(省)は7日、カラオケボックスなど娯楽施設で歌われる楽曲の歌詞の中に、「国家安全に危害を加える」などの内容が含まれる歌を禁止するとの通達を公表した。

通達は、全国のカラオケボックスなどで歌われる曲目を管理し、禁止する曲名のリストを作成するよう各地の地方政府に命令した。中国当局はまた、カラオケ機器の生産メーカーや各地の娯楽施設に対して、歌の内容を自己検閲するよう要求した。

当局は、歌うことを禁止する曲についての基準を9項目発表した。「国家統一に危害を加える」「国家安全保障に危害を加える」「国家の栄誉を傷つける」「民族感情を傷つける」などのソングは完全に禁じられる。

山西省の音楽評論家、秦氏は9日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、中国当局は「思想・文化分野への締め付けで、国民に対する洗脳を強めようとしている」と批判した。

同氏によると、当局に禁止される歌の多くは民主主義や人権などをテーマにした内容だ。「実は数年前、中国のカラオケボックスでは(ロック・アーティストの)崔健氏や、(ロック・バンドの)Beyondの歌など、(共産党体制に)批判的な歌は非常に人気があった」という。

中国当局は通達で、娯楽施設に法令で禁止されている歌を使わないよう要求した。また、ミュージック・ビデオや曲選びに自己検閲を行ったメーカーのカラオケ機器を使うよう命じた。

中国政府系メディアの報道では、文化観光省は全国のカラオケボックスで歌われる曲目を審査する専門家チームを立ち上げる計画だ。

湖南省に住む学者の田氏は、同通達は現在、国内の政治情勢が不安定であることを反映したとRFAに語った。

「中国社会が不安定となれば、中国当局はその統治を強固にするために様々な措置を講じる。『文攻武嚇(言葉で攻撃し、武力で威嚇する)』のうちの『文攻』は各分野において、国内外でプロパガンダを行い、世論を支配することである。権威主義体制が人々の思想をコントロールする手法だ」

時事評論家の孫家林氏は、中国当局はこのほど、歌だけでなく、ダンスや文学作品などにも検閲を強化していると示した。

(翻訳編集・張哲)

関連記事
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。