深刻な洪水災害に見舞われた中国・河南省鄭州市で、現地取材する海外メディアの記者が妨害を受ける事件が起きた。写真は、7月22日の鄭州市の京広トンネル前(NOEL CELIS/AFP via Getty Images)

共産党系団体、水害報道の外国記者への脅迫呼びかける 英BBCが中国政府に対処要請

英国放送協会BBCは27日、河南省の洪水被害を取材する外国記者への嫌がらせを直ちに停止させるよう、中国政府に要請する声明を発表した。

先週末、中国当局はSNS上で河南省の洪水被害を報道したBBC記者の所在を通報するよう呼びかけた。その投稿へのコメントの中には殺害の脅迫も含まれていた。また、BBC記者と間違えられた他社メディアの記者が、怒った群衆に囲まれ、映像の消去を迫られた。

声明は、「外国メディアの記者を危険にさらすこうした攻撃をやめさせるよう、中国政府は直ちに措置をとる必要がある」と述べた。

BBCの記者は、「これらの攻撃の目的は報道を妨害することであり、全ては中国政府によって入念に計画されたものだ」と指摘した。

SNS上で、大量の五毛党(ネット工作員)は河南省の洪水災害に関するBBCの報道を「BBC中傷(#BBCSlander)」と呼んでいる。「#BBCSlander」のハッシュタグは1億回以上再生されている。

中国政府は一部の人々を扇動して外国人記者に嫌がらせをするよう仕向けたとされている。記者本人やその家族が暴力的な脅迫を受けたという。 

BBCの中国特派員であるスティーブン・マクドネル(Stephen McDonell)氏はこれを「特にBBCを標的にした、共産党機構による手の込んだ嫌がらせキャンペーンの一環だ」としている。

同記者はまた、「当局は、被災地で何を隠そうとしているのか?」と疑問を呈した。

中国共産党の青年組織「河南共青団」の公式SNSウェイボー(微博)アカウントは先週末、BBCのロビン・ブラント(Robin Brant)記者によるインタビューを警戒するよう市民に呼びかけた。さらに、ロビン記者とは違う人の写真を掲載し、彼の所在に関する情報提供をネットユーザーに呼びかけた。

中国のSNS上では、大量の五毛党が外国メディア記者に対する攻撃を展開している。

「見かけたら、なぶり殺す」「誰なのかが分からなくなるまで、ボコボコにしてやる」などの書き込みが見られた。

また、「外国人記者を攻撃するいかなる人であっても、英雄だ。なぜなら、誰もがやりたいことだからだ」「現在、数百人態勢で外国人記者を捜索中だ。警察に通報する用意もできている」などのコメントも見られた。

ドイツ公営放送「ドイチェ・ベレ」のマティアス・ベーリンガー(Mathias Boelinger)記者や、米ロサンゼルス・タイムズ紙のアリス・スー(Alice Su)記者は先週日曜日、鄭州市内で暴徒たちに取り囲まれた。

ベーリンガー記者はBBCのロビン記者と間違われたようだ。

ある人はベーリンガー記者の腕を掴み、別の人は携帯電話を使って撮影しながら、「中国を誹謗中傷するな」「中国に泥を塗るな」と同記者を罵倒した。

その後、ベーリンガー氏が自分はロビン記者ではないと説明した後、群衆の態度は少し落ち着いたという。

同記者は「もし包囲されたのがロビン氏だとしたら、彼はどうなっていたか、想像もつかない。現在の中国に置かれているメディアの環境は本当に恐ろしいものだ」と嘆いた。

米ニューヨークに本部を置く民間団体、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)アジアプログラムコーディネーターのスティーブン・バトラー(Steven Butler)氏は、「報道に従事する外国人記者に対する嫌がらせは、耐え難いレベルにまで達している」とし、「中国は、特に北京五輪に向けて、自然災害やその他の問題を取材する国内外のジャーナリストに安全な環境を提供すべきだ」と呼びかけた。

昨年、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルといった主要紙の中国特派員、少なくとも18人が国外追放となった。

BBCの中国特派員のジョン・サドワース(John Sudworth)氏や、豪放送協会(ABC)のビル・バートルズ(Bill Birtles)記者、そして豪経済紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(Australian Financial Review)のマイケル・スミス(Michael Smith)記者など、一部の外国人記者たちは、身の危険を感じ、緊急帰国を余儀なくされた。

(翻訳編集・李凌)

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