東南アジアに広がる中国製ワクチン不信 使用中止相次ぐ
東南アジア諸国で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の中国製ワクチン使用を中止する動きが続いている。 各国政府は表向きに「在庫切れ」と説明しているが、その効果の低さが表面化したものとみられる。発展途上国を中心に「ワクチン外交」を繰り広げていた中国共産党の計画は、暗礁に乗り上げている。
マレーシア保健省は16日、「米ファイザー製ワクチンは十分に供給できる。中国シノバック製ワクチンは在庫がなくなり次第、接種を中断する」と表明した。それによると、中国から約1600万回分を注文したシノバックのワクチンは、これまで半分程度接種された。残りは2回目に使用する予定という。今後は米ファイザー製ワクチン約4500万回分(2250万人分)を接種することを明らかにした。
当局の説明とは裏腹に、マレーシアは、中国製ワクチンを使用しても止められない感染拡大の現状を突きつけられている。クアラルンプール郊外のワクチン接種センターでは13日、スタッフ453人のうち45%に当たる204人の感染が確認された。この多くは接種済みにもかかわらず感染したが、当局は接種したワクチンについては言及しなかった。以降マレーシアは数回の厳格なロックダウン(都市封鎖)の措置を取ったが、1日の感染者数は4日連続で1万人を超えている。
中国製ワクチンへの不信は、東南アジア諸国を中心に広がっている。インドネシアはデルタ株(インド型変異)の拡散で連日感染者数が急増し、一日5万人を上回った。15日までの接種率は、全人口の5.8%に過ぎず、うち90%以上がシノバック製を接種した。
最近では中国製ワクチンを接種した後に死亡した医療従事者の数まで報告されている。このため、インドネシア当局は7月上旬、中国製ワクチンを接種した医療従事者に、米モデルナ製ワクチンを追加接種するよう要請した。引き続きタイ政府も同様に、英アストラゼネカ製ワクチンを追加接種する計画を発表した。
中国は発展途上国に自国のワクチンを安価で提供する「ワクチン外交」に力を注いでいることで知られる。最近では、東南アジアを中心にその動きが著しい。昨年8月に中国を訪問したインドネシア外相に中国ワクチンの供給を約束したほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のうち8カ国のワクチン供給を直間接的に管理し、パンデミックという情勢の不安定さを利用して、地域における影響力の拡大を狙っている。
しかし最近、東南アジア諸国で都心部を中心に感染者数が急増し、中国製ワクチンの効果を疑う声が強まっている。中共が関係構築のための外交カードに使ったワクチンだが、むしろ反中感情を助長させた。
中国ワクチンを巡る議論は、南アメリカまで広がっている。ブラジル・ボウソナール大統領は自身のSNSに「シノバックは予防効果がほとんどない」と主張し、中国ワクチン接種者に対する追加接種を計画中であると述べた。来年のブラジル大統領選挙の有力候補であるジュアンドリア・サンパウロ州知事もまた、自身のSNSにシノバック製ワクチン接種を6月に完了したが、最近受けたPCR検査で陽性判定を受けたと公開した。