中国、ミャンマー軍政に支援強化 西側が警戒すべき=米専門家

2022/04/18 更新: 2022/04/20

米国の国際安全保障の専門家はこのほど、中国当局のミャンマ軍事政権への支援強化は、2022年2月の米インド太平洋戦略で確認された同地域における長期的なコミットメントに対する直接的な脅威となると示した。

米シンクタンク「米国平和研究所」ミャンマー部門のジェイソン・タワー主任は13日付の論文で、ロシアのウクライナ侵攻により、ミャンマー軍事政権に対するロシアの支援が激減するなか、中国は同軍事政権への支援を強化し、この地域での影響力を拡大している、と指摘した。

中国当局は当初から、ミャンマー軍事政権によるクーデターを「内閣改造」と表現し、何事もなかったかのように振舞っていたという。

昨年3月になって、ヤンゴンにある中国系の工場や企業が相次ぎ襲撃され、中国は、軍事政権への強い支持は反中感情に繋がっていくことになると気づき始めた。

その後、中国当局はミャンマーへの投資・融資を減速させる一方、反対派とも関係を築きはじめた。

「しかし、中国共産党は、反対派が政権を握る可能性は低く、しかも中国側にとって邪魔な存在であると考えている」とタワー氏は分析した。

1年にわたり反対派と暫定的な関係を続けてきた中国は今月、軍政への支援を強化した。

「中国の突然の政策転換は、ほぼ間違いなくミャンマーの社会不安を深めた」とタワー氏は指摘し、中国が公然と軍政と協力関係を深めたのは「数百億米ドルに及ぶミャンマーへの戦略的投資計画を速やかに再開するためである」と付け加えた。

ミャンマー前政権の関係者や民主化運動関係者が結成した並行政権「国民統一政府(NUG)」は、中国当局の方向転換を「ミャンマー国民に対して極めて無礼で不快な行為」と非難した。

一方、米国にとって、インド太平洋地域の中心にある大量虐殺軍事政権に対する中国の支持強化は、米国のインド太平洋戦略の長期的な地域公約に対する直接的な脅威である、とタワー氏は指摘する。

3月下旬にウクライナ侵攻が勃発してから、モスクワのミャンマー軍政への支援が激減する中、中国はその代役に躍り出た。ASEAN3カ国の外相とミャンマー軍政の外交担当ウンナ・マウン・ルウィン氏を中国に招待し会談を行った。

その後、4月1日に中国の王毅外相がウンナ・マウン・ルウィン氏に接見し、広域経済圏構想「一帯一路」の下での新たな経済協定に調印した。ミャンマー側の声明によると、中国は軍事政権に新たに6億5000万元(約130億円)の援助を約束した。

中国官製メディアによると、王毅外相がウンナ・マウン・ルウイン氏に、中国は「状況がどう変わろうとも」政権を支持すると伝えた。

「軍事政権との関係を強化する一方で、中国は北部の民族武装集団(EAO)、特に最も勢力のある集団と従来のつながりを維持しつつ、しばしば強化している」とタワー氏は言う。「要するに中国当局は、ミャンマーのすべての主要武装勢力にとって、中国は重要で欠かせない存在であることを定着させようとしている」

「中国当局に依存している軍事政権は、中国当局の支援・影響を受けている民族武装集団の包囲網に囲まれている」「中国最高指導部は、このような関係のネットワークは中国にとって最も好都合であると考えている」とタワー氏は指摘した。

タワー氏はこれを「危険な戦略だ」とみている。軍事政権への支援は結果的に現地の反中感情を増幅させ、中国当局の戦略的投資のリスクがさらに高まり、しかも長期紛争の火種となる可能性があると分析した。

同氏は、インド太平洋地域の平和と民主主義に対する脅威を増大させているとも指摘した。

「西側諸国は存亡の脅威に直面するウクライナを助けている一方で、東南アジアにおける中国の動静からも目を離してはならない」とタワー氏は警鐘を鳴らした。

同氏は米国政府にアドバイスを送った。民主主義国家が地域安全保障の柱になるように、日米豪印戦略対話(クアッド)のメンバーに働きかけてさらなる支持を求めるべきという。

また、米国および同盟国は、ミャンマーのすべての反対派勢力を支援する方策をもっと探り、同時に中国に対し、その戦略が地域の安定を脅かしていると明確に警告すべきという。

 

(翻訳編集・叶子静)

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