パキスタン「一帯一路」の港で中国人狙う自爆テロ、2人死亡 武装勢力、今後も攻撃継続を示唆
パキスタン地方政府によると、同国南西部グワダルで20日、中国人を乗せた車両を狙った自爆テロが発生した。この事件で現地の子供2人が死亡、少なくとも1人の中国人を含む3人が負傷した。バロチスタンの武装勢力が犯行声明を発表しているが、関係は定かではない。この勢力は、今後もパキスタン国内の中国人および関係するプロジェクトに対する攻撃を続けることを予告している。
発表によると、自爆テロは午後7時頃、グワダル港の道路近くの建設現場で発生した。グワダルは南西部のバロチスタン州にあり、分離独立派の武装勢力が長期にわたって反乱を続けている。
バロチスタン州政府報道官のLiaquat Shahwani氏は、自爆テロの現場近くで遊んでいた地元に住む「2人の子供が死亡し、民間人3人が負傷した」と述べた。中国人を乗せた車両は、軍と警察に護衛されていた。当局によれば、負傷した中国人は、近くのグワダル病院に搬送された。容体は安定しているという。
アラビア海に面したグワダル港は中国共産党の広範囲経済構想「一帯一路」の戦略的要衝であり、中国とパキスタンによる中国ー中央アジアをつなぐ経済回廊「中パ経済回廊」の一部でもある。中国はこの経済回廊に、600億ドル規模の開発投資を行なっている。
しかし、中国投資は分離派の武装勢力がもたらす情勢の不安定さに拍車をかけて、中国人がテロ攻撃の対象になる危険が高まっている。
反政府組織であるバロチスタン武装勢力(BLA)は20日の攻撃について、中国人の乗った技術者の車両に「自己犠牲」的な攻撃を行なったと犯行声明を発表した。
BLAは、この攻撃の実践した人物の名前を掲げ、さらに「中国がパキスタンの占領国家を支援し続け、搾取的なプロジェクトを停止せず、バロチスタンから撤退させないのであれば、BLAはバロチスタンに不法に駐留する中国人や中国のプロジェクトに対する攻撃を続ける」ことを示唆した。
BLAは2018年8月にも中国人技術者を狙った攻撃、同年11月のカラチ中国領事館への攻撃、2019年5月のグワダルのパール・コンチネンタル・ホテルへの攻撃、2020年6月のパキスタン証券取引所への攻撃などの関与を公開している。
今年7月には、北西部カイバル・パクトゥンファ州でバスが自爆テロに遭い、中国人労働者9人を含む13人が死亡した。このバスは「一帯一路」に関連するダムの建設現場に向かう途中で30人以上の中国人を乗せていた。この事件に関して、BLAは関与に触れていない。
バロチスタン情勢に詳しいジャーナリストで国境なき記者団顧問を務めるアドナン・アーミル(Adnan Aamir)氏は、「情勢不安定によりグワダル港湾プロジェクトは始動できず、結果として中パ経済回廊の将来さえ危機に瀕するだろう」と指摘している。
(翻訳編集・佐渡道世)