中国対外貿易の見通しが悪化 厳しい封鎖措置や戦狼外交などが影響
中国の王文濤商務相は23日の会見で、来年の対外貿易について、ベース効果の剥落などを踏まえると、これまで以上に複雑な状況になる可能性があると述べた。今年下半期にはすでに複雑な状況に直面しているという。
専門家らは、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の感染防止で実施した厳しい封鎖対策、そして製造業の海外移転、強硬な外交姿勢などの要因が、中国の対外貿易を鈍化させていると指摘する。
代償の高い感染防止策は、対外貿易に大打撃
米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は26日、専門家の意見として、港や工場の閉鎖といった中国の中共ウイルス感染防止策は代価が高すぎると指摘した。
世界第3位のコンテナ港である寧波舟山港の従業員1人が中共ウイルスに感染したことで、当局は8月初めに港全体を閉鎖した。25日に再開したが、こうした物流の中断は対外貿易に混乱を招く。
また、中共ウイルスの感染拡大により、中国最大の経済都市・上海市周辺の海上および航空貨物の一部を停止し、物流は深刻な渋滞を起こした。オランダの大手総合金融機関INGグループの報告書は、その影響は9月末から10月にかけて続くと予想した。
物流が滞った結果、国際貨物運賃の上昇は続く可能性がある。オンライン貨物市場会社Freightosによると、中国からアメリカ東海岸までのコンテナ1個あたりの運賃は、8月初旬にはじめて2万米ドル(約220万円)の大台に、前年比5倍増だった。中国からヨーロッパまでの最新運賃も1万4000米ドル(約154万円)に上昇した。
生産ラインの中国離れは加速
ウイルスの感染が収まりつつある東南アジアなど近隣諸国の生産能力は回復基調に乗り、一時中国に流れていた発注は戻りはじめている。なお、人件費が中国より低いため、労働密集型製品の生産は中国からこれらの国にシフトしつつある。
中国政府の資料によると、インフレ率を示す生産者物価指数は7月に前年比で9%上昇した。
原材料価格と物流コストの高騰により、中国製造業にとって、新規受注がたとえ増えてもコストの増加により、利幅は小さい。
なお、東南アジア諸国の工場再開と、欧米諸国のサプライチェーンの再編成(メキシコ、東ヨーロッパなどの生産ライン増設など)により、中国の製造業への依存度は低下する傾向だ。そのため、中国の製造業者にとって、大幅な値上げは難しい。一方、原材料と物流コストは下がらないため、利益率はさらに圧迫される。
中国政府の強硬な外交戦略は裏目に
各国は政治的リスクを避けるため、対中ビジネスモデルの見直しは必至で、製造業の中国離れに拍車をかけている。これもまた、中国の対外貿易に影響する要因だといわれる。
中国とオーストラリアの貿易紛争はその好例だ。オーストラリアがウイルス発生源の独立調査を要求したことで、中国政府はオーストラリアの牛肉、大麦、ワインなどの輸入を制限する報復措置をとった。オーストラリア議会はこのほど、強制労働による製品の輸入を禁止する決議案を可決したのも、中国への対抗措置とみられる。
すでにアメリカ、イギリス、カナダは中国からの強制労働製品の輸入禁止を発表した。
アメリカは、強制的な技術移転や知的財産権侵害など中国の長年にわたる不公正な貿易慣行に対して、年間3700億米ドル(約41兆円)の中国製品に追加関税を課している。この政策は、トランプ政権からバイデン政権に引き継がれている。
米シンクタンク、ブルッキングス研究所中国センターの研究員デビッド・ドーラー氏はVOAに対して、「不確定要素は企業にリスクをもたらし、その投資と計画に影響を及ぼす。中国と一部の国との状況はさらに悪化し、新たな制裁または経済問題が発生する可能性がある。 政治的緊張は間違いなく経済関係にダメージをもたらす」と述べた。
(翻訳編集・叶子)