中国 香港保険の収益にも課税強化か 保険株下落 日本の投資家・企業への影響は

2026/08/07 更新: 2026/08/07

中国共産党(中共)当局が海外資産への課税を強めている。対象はオフショア信託にとどまらず、香港などで契約された保険商品の収益にも広がる可能性がある。

今回の動きは、中国の富裕層だけの問題ではない。香港市場に上場する保険会社の株価が下落し、中国経済の先行きや香港の金融市場に対する不安が広がっている。香港株や中国関連株に投資する日本の個人投資家、日本企業にとっても注目すべき動きである。

中共当局は、中国国民による海外投資や海外所得への課税を強化している。背景には、不動産不況で悪化した地方財政を立て直すねらいがあるとの見方が出ている。

香港保険株が下落 AIA・プルデンシャル・FWDに売り

8月6日、中共当局が課税対象をオフショア保険の収益に広げるとの報道を受け、香港株式市場では保険関連株が売られた。一部の銘柄は午前の取引で8%以上下落した。

終値では、AIAグループが5.92%安の73.15香港ドル、プルデンシャルが4.31%安の108.8香港ドル、FWDグループが5.59%安の29.72香港ドルとなった。マニュライフ・ファイナンシャルも2.23%安の342.6香港ドルで取引を終えた。

中国の財新網は8月5日、SNS上で拡散された中国本土の住民宛ての納税通知に、香港の保険商品から得た収益が課税対象として記載されていたと報じた。

税務弁護士や商業銀行、香港の保険業界の関係者によると、一部の省や市ではすでに課税された事例があるという。主な対象地域は杭州と北京で、個別案件では税率が20%に達している。

対象とされているのは、主に保険契約に基づく配当金と、前納した保険料に生じる利息収入である。

イギリスのフィナンシャル・タイムズは8月5日、今回の追徴課税は海外資産から得た利益を主な対象としていると報じた。複数の政府関係者や銀行関係者、顧問は、過去にさかのぼって課税されていることを認めており、一部では2000年までさかのぼるケースもあるという。

国際税務や移民業務を手がけるレスペランス・アンド・アソシエーツのデービッド・レスペランス氏は、中共当局による税務調査の圧力が強まるなか、今年に入って少なくとも6人の中国人富裕層の顧客が、中国本土を離れる計画を本格的に進め始めたと明らかにした。

中国富裕層はなぜ香港で保険・海外資産を運用してきたのか

香港は、中国本土の富裕層にとって、海外資産の運用や保険契約、資産承継の拠点の一つだった。中国本土とは異なる金融制度があり、外貨建て資産や海外投資にアクセスしやすいことが背景にある。

今回の課税強化は、こうした香港の役割に影響を与える可能性がある。中国本土の顧客に依存する香港の保険会社では、保険契約や金融商品の販売が鈍るとの懸念も出ている。

オフショア信託にも課税拡大 20%課税と追徴の実態

これに先立ち、中共当局はオフショア信託の資産についても課税する方針を決めた。7月24日から、オフショア信託の設立や資産移転、運用、資産価値の増加、分配、終了といった主な段階に、20%の税を課すとしている。

オフショア信託を通じて香港に保有される資産は、6670億ドル(約105兆5000億円)に上ると推計されている。

対象者は10月22日までに申告と納税を行う必要があり、期限を過ぎると、1日当たり万分の5の延滞金が加算される。

中国メディアによると、火鍋チェーン大手「海底撈」の張勇氏夫妻が設立したオフショア信託については、数十億元規模の追加納税を求められる可能性があるという。

また、杭州娃哈哈グループの宗慶後氏の一族については、過去の納税を示す書類や税務上の居住者資格、資金の帰属に関する認定によって、約20億〜25億元(約469億〜586億円)の追納が必要になる可能性がある。

SOHO中国の創業者、潘石屹氏と妻の張欣氏についても、20年以上前にオフショア信託に移した海外資産に対し、総税負担が50億〜70億元(約1兆1716億〜1兆6402億円)に上る可能性があるとされる。

不動産不況で悪化する中国地方政府の財政事情

アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シー教授は、中共当局が追徴課税を拡大する理由について、「明らかに財政上の考慮によるものだ」と述べた。

中国の地方政府にとって、土地使用権の譲渡収入はかつて主要な財源だった。しかし、2021年に不動産危機が深刻化して以降、不動産市場は低迷を続け、土地譲渡収入も大きく減っている。地方政府の財政は厳しい状況に置かれている。

報道によると、中国の税務当局は財源不足を補うため、富裕層の海外資産に調査の重点を移している。海外で得たキャピタルゲインや投資収益を厳しく調べることで、富裕層が資産を海外に移したり、海外の制度を利用して節税したりする余地を狭めている。

日本への影響は

今回の課税は、中国の居住者を主な対象とするもので、日本の個人に直接課税される話ではない。

ただ、中国の富裕層による海外投資や香港での資産運用が縮小すれば、香港市場の資金の流れが変わる可能性がある。香港株や中国関連株を保有する日本の投資家にとっては、保険株だけでなく、銀行、不動産、資産運用会社などへの波及にも注意が必要である。

また、中国で事業を展開する日本企業にとっても、中共政府が企業や富裕層に対する資金管理と税務調査をどこまで強めるのかは、投資環境を見極めるうえで重要な材料となる。

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