中国 大企業に「60日以内の代金支払い」促す 中小企業の未払い深刻化で金融リスク懸念

2026/09/16 更新: 2026/09/16

中国では、企業が未払い代金をめぐる裁判で勝訴しても、実際に代金を回収できないケースが少なくない。地方政府や大企業による支払いの遅れが取引先に広がり、中小企業の資金繰りを圧迫している。

中国国務院弁公庁は9月10日、「中小企業の代金回収難の是正に関する通知」を公表した。大企業に対し、中小企業への代金を原則60日以内に現金で支払うよう促す内容である。

通知では、物品や工事、サービスの提供を受けた日から60日以内に、中小企業へ代金を現金で支払う取り組みを、大企業に求めている。故意に支払いを遅らせる行為を改めるとともに、銀行からの借り入れや社債の発行によって資金を調達し、未払い代金の支払いに充てることも認めた。

一方、専門家からは、この措置は未払い問題を根本的に解決するものではなく、リスクが金融機関や債券投資家に移るだけになるおそれがあるとの指摘も出ている。

勝訴後も回収できない 地方政府の工事代金未払い

中国メディア「指尖新聞」は、山東省済南市で起きた工事代金の未払いをめぐる裁判を報じた。

2020年7月に完成し、検収を終えた工事では、監査後の精算額が1億4600万元を超えた。発注者である歴城区の街道弁事処は約9200万元を支払ったが、約5253万元が未払いとなった。

施工企業は裁判を起こし、2024年9月、一審で工事代金と利息の支払いを命じる判決を得た。優先弁済権も認められた。しかし、判決が確定したあとに強制執行を申し立てても、実際の回収には至らなかった。

2025年9月、双方は30回に分けて返済することで和解した。

この事例をめぐる法律関係者の討論では、行政機関が「財政難」を理由に法的責任を免れるべきではないとの意見が示された。地方政府による工事代金の未払いが繰り返される背景には、支払いを遅らせても負担が小さいことや、勝訴判決が出ても執行の段階で十分に機能しないことがあると指摘されている。

売掛金28兆8800億元 中小企業の資金繰りを圧迫

ブルームバーグは2025年11月、経済学者・李稻葵氏の推計として、地方政府に関連する組織が企業や公務員に抱える未払い債務が約10兆元に上り、2024年の中国の国内総生産=GDPの約7%に相当すると報じた。

企業の間でも売掛金は増えている。中国当局の統計によると、2026年7月末時点で、一定規模以上の工業企業が抱える売掛金は28兆8800億元で、前年同月より8.5%増えた。代金を回収するまでの平均期間は約72日だった。

借入・社債で未払いを置き換え 金融機関にリスク移転も

今回の通知では、大企業が銀行から借り入れたり、社債を発行したりして資金を調達し、中小企業への未払い代金を現金で支払うことを認めている。電子決済の手段についても、支払い期限に制限を設けるとしている。

台湾のマクロ経済学者、呉嘉隆氏は、資金を借りること自体が問題ではなく、借入後に十分な収益を生む事業や資産があるかどうかが重要だと指摘する。

企業に将来の利益や資金の流れがなければ、新たな借金は返済期限を先延ばしにするだけで、債務の問題は残るという。

台湾・南華大学の孫国祥教授は、大企業が取引先に抱える未払いを、銀行融資や社債など、返済期限が決まった債務に置き換える措置だと分析する。

中小企業は早い段階で現金を受け取れる一方、大企業の債務がなくなるわけではない。リスクは取引先から銀行や債券投資家に移り、状況によっては政府が負担する可能性もあるとしている。

実効性の鍵は制裁と情報公開 検収先延ばしの抜け道は残るか

60日以内の支払いを実現するには、制度が実際に機能するかが課題となる。

孫氏は、遅延利息や信用面での制裁、情報公開、責任追及の仕組みが十分でなければ、大企業は商業手形やサプライチェーン金融、検収の先延ばしなどを通じて、実質的に支払いを遅らせる余地があると指摘する。

また、支払い期限をいつから数えるのか、検収の完了をどう判断するのか、支払いが遅れた場合に誰が責任を負うのかも重要になる。

今回の通知は、支払い期間の起算点、支払いの方法や手続き、検査や検収、工事の精算に関する基準と期限、最長の支払い期間を明確にするよう求めている。

大企業や地方政府による未払いは、中小企業の資金繰りを悪化させ、投資の縮小や賃金の支払い遅れ、人員削減、休業や廃業につながるおそれがある。雇用や消費、税収にも影響が及ぶ可能性がある。

未払いの背景に地方財政と過剰投資 構造問題の解消が課題

今回の政策は、新たな支払いの遅れを抑え、中小企業など取引先の当面の資金繰りを改善する可能性がある。

ただ、長年積み上がった工事代金の未払いや、地方政府に関連する未払いには、財政不足や過剰投資、国有企業の資金負担、裁判所の判断を実行に移す仕組みの弱さなど、構造的な問題がある。

支払い期限を60日に短縮しても、最終的に必要となる資金は、企業の収益や経済活動によって生み出されるものである。収益が改善しなければ、借金によって未払いを補う政策は、一時的に時間を稼ぐ対応にとどまり、信用リスクが金融システムに移るおそれがある。

趙彬
顧曉華
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