飛行体が北京市中心部にある高層ビル「シティックタワー(中国尊)」に衝突した事故を受け、北京市はドローン規制をさらに強化する。11月15日から市内全域でドローンの飛行、所持・保管、輸送を禁止する。さらに9月20日からは、北京を中心とする飛行禁止区域を半径300キロ圏に拡大し、中共指導部の避暑地として知られる河北省北戴河も対象に含める。
専門家は、新たな規制について、中共政権の不安を示すものだと指摘し、規制強化がかえって負の影響をもたらす可能性があるとみている。
北京でドローンを全面規制 半径300キロ圏を飛行禁止に
北京市が9月11日に改定した「北京市無人航空機管理規定」は11月15日に施行される。新規定は、市内全域でドローンの飛行だけでなく、所持・保管、輸送も全面的に禁止する。
ドローン本体や主要部品を北京市内で所持、保管することも禁止し、現在保有しているドローンや主要部品については、11月15日までに北京市外へ移すか、処分するよう求めている。
北京市は今年5月1日から同規定を施行していたが、今回の改定で規制をさらに強化した。
北京のメディア関係者、楊鵬(仮名)氏は大紀元に対し、現在、ドローンを所有する多くの北京市民が、河北省など周辺地域に住む知人宅へ機体を移していると話した。河北省も飛行禁止区域だが、保管自体は禁止されていないという。
楊氏によると、保管禁止措置について北京市内の末端警察官に尋ねたところ、今年5月の調査後も6〜8月にかけて民間の保有状況を調べ続け、当局に引き渡していないドローンが残っていることが分かったという。新規定の施行前となる11月までに引き渡さなければ、警察が直接自宅を訪れ、機体を押収する。
楊氏はまた、DJIなど北京に店舗を構えるドローン販売業者も、店内のドローンをすべて北京市外へ搬出する必要があると話した。
北京市の規定とは別に、中国共産党(中共)当局は9月20日から、北京とその周辺により広い「首都飛行禁止区域」を設定すると発表した。
今回の規制区域は、これまでとは大きく異なる。天安門を中心に半径300キロ圏を設定し、北京市全域に加えて、東は河北省秦皇島市の北戴河、西は山西省大同市、北は内モンゴル自治区シリンゴル盟南部、南は山東省徳州市までを含む。
専門家「新規制は政権の不安を示す」
中共当局は、北京市のドローン規制について「首都地域における無人航空機管理の新たな情勢に対応し、首都の安全防衛線を確実に強化するため」と説明している。
一方、香港紙「信報」は、当局が規制の目的として「テロ対策」を明示している点に注目し、回転翼ドローンがテロ攻撃に使われることを警戒しているとの見方を示した。特に、ウクライナが昨年、FPVドローンをロシア国内に持ち込み攻撃を行ったことが、治安当局に警戒感を与えた可能性があるという。
今回の規制強化については、中国尊への航空機衝突事故との関連も注目されている。
今年6月26日夕方、軽量スポーツ航空機が航路を外れ、北京で最も高いビル、シティックタワー(中国尊)の上部に衝突した。当局によると、操縦士が死亡し、13人が負傷した。厳しい飛行規制が敷かれる北京で、なぜ航空機が規制空域に侵入できたのか、衝突に至った詳しい経緯は何だったのかなど、外部からさまざまな疑問の声も出ている。
台湾国防部系シンクタンク、国防安全研究院の蘇紫雲研究員は大紀元に対し、一連の規制は「中共政権の不安を示す指標だ」と述べ、中国尊の事故とも間接的に関係しているとの見方を示した。
ただし、より重要なのは、政権の安全維持を優先するあまり、あらゆるものに警戒する段階にまで至っていることだという。
蘇氏は「通常、こうした小型ドローンは、仮に攻撃の意図があっても、大きな被害をもたらすことはないはずだ。中共は小さな動きが波及することを警戒し、最も厳しい規制に踏み切った」と述べた。
他国でもドローン規制はあるが、通常は特定区域に限られると指摘した。
「北京のように半径300キロもの広い範囲を指定する例は異例だ。他国では主に中大型のドローンを対象とし、数十メートル程度の高度で飛ばす娯楽用の小型機まで一律に規制することは少ない。比較すれば、中共の対応が過剰だと分かる」と語った。
今回の規制をめぐっては、中共指導部がアメリカによる「斬首作戦」を警戒しているのではないかとの見方も出ている。
蘇氏は、今回の改定はむしろ、中共が国民だけでなく政府関係者も信用していないことを示しているとの見方を示した。
ドローンは、要人の行動や車列の配置、建物の出入り口などを撮影できるため、広い意味での情報収集手段になり得るという。
そのうえで蘇氏は、北京が設定した範囲はあまりにも広く、常識的ではない。それだけ政権が不安を抱えていることを示していると述べた。
楊氏も、今回の規制強化について、中国尊の事故や、アメリカによる斬首作戦への警戒と無関係ではないとの見方を示した。
「中共の社会安定維持政策は、すでに極端な段階に達している。あらゆるものが『絶対的な安全』に従わなければならず、その考え方がドローンの全面規制へと発展した」と語った。
さらに「社会の安定維持が何よりも優先され、すでに通常のテロ対策を超えている。極端な状態であり、それだけ恐れているということだ」と述べた。
規制強化の副作用 コスト増や住民反発の懸念
民間でのドローン利用について、楊氏は、規制が強まっても、それをかいくぐる動きは出てくるとの見方を示した。
中国の中古品取引サイト閑魚や淘宝などでは、現在もドローンの部品が販売されているという。ただし、出品者は「ドローン部品」と明記せず、型番だけを記載し、分かる人にはドローン部品だと分かる形で販売していると説明した。
蘇氏は、北京市が5月にドローン規制を強化した後に中国尊の事故が起きたことから、行政の怠慢や運用上の穴を完全にふさぐのは難しいと指摘した。
また、習近平が軍内部の粛清を進めるなか、北京市内の軍・警察機関にも影響が及び、職務に慎重になりすぎる萎縮効果が生じていたと分析した。その後、6月に中国尊の衝突事故が起きたことで、当局の警戒がさらに強まったとし、「今後、より重大な抜け穴が生じる可能性もある」と述べた。
蘇氏はまた、中共が北京市内でドローンをゼロにする政策を進めれば、住民同士の通報を促す可能性もあると指摘した。
「誰かの家にドローンの部品があると通報され、プロペラ1枚、小型モーター1個を持っているだけでも違反とされる可能性がある。本当に『ゼロ』を実現しようとすれば、非常に大きなコストがかかり、住民の反発も招くだろう」と語った。
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