2009年、新疆ウイグル自治区ウルムチで買い物する女性と、背後に銃器を構えて立つ中国軍兵士(PETER PARKS/AFP/Getty Images)

中国、人口抑制策で新疆少数民族人口は450万人減る=専門家

中国の新疆政策に関するドイツ人専門家で、米NPO共産主義犠牲者記念財団の上級研究員でもあるエイドリアン・ゼンツ(Adrian Zenz、中国名:鄭国恩)博士はこのほど、中国当局がウイグル人など少数民族を対象にした人口抑制政策に関して論文を発表した。それによれば、同地区の少数民族の人口は今後20年内に450万人減少する見込みだという。

新疆で今後20年間に少数民族人口450万人減少の見込み

学術誌「中央アジア調査(Central Asian Survey)」は24日、ゼンツ氏の最新研究報告を掲載した。同研究報告は、中国当局は現在、持続的で組織的なアプローチをとり、女性への産児制限、他の地域での強制労働、強制収容施設での違法な拘禁、漢民族の移住などを通じて、現地のウイグル人などの人口増加を抑えていると指摘した。

米ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、ゼンツ氏は報告書の中で、本来なら新疆の少数民族の人口は、2040年に約1310万人までに増加する見通しだとの見方を示した。しかし、中国当局の人口政策により、2040年には同地域の少数民族の人口は約860万~1050万人にとどまるとの推算になった。

「今後20年間で、2040年までに同地域の人口減少が約410万人に達するという可能性は最も高い。その一方で、新疆南部の漢族の人口は現在の8.4%から25%に増加する」と同氏はRFAに語った。

さらに、「中国当局は、現地の漢民族の人口を増やすことで、当局がより効果的に少数民族を監視し、同化し、さらに支配できると信じている」とゼンツ氏は批判した。

ジェノサイドの新たな証拠

米ホロコースト記念博物館のシニア・アドバイザーだったエリン・ファレル・ローゼンバーグ(Erin Farrell Rosenberg)氏は、ゼンツ氏の最新論文は、ウイグル人を標的にした中国当局の人口計画の長期的な企みを反映したと信じている。

「優生学に基づいた観点からしても、これは明らかなジェノサイドのシグナルである。われわれは、今までのジェノサイドに関する歴史の中で、ある特定の人種を『脅威的だ』と認定する動きを何回も見てきた」

ローゼンバーグ氏は、新疆のウイグル人住民の場合、優生学に基づくジェノサイド政策は、もはや理論の段階にあるものではなく、すでに実践されていると指摘。「これは、われわれがジェノサイドを目撃していることを意味する」と同氏は述べた。

ゼンツ氏も、中国当局による少数民族の人口抑制政策は、国連の『ジェノサイド条約(1948 U.N. Genocide Convention)』に準拠してジェノサイドにあたると述べた。同条約は集団殺害を国際法上の犯罪とし、その防止と処罰を定めている。

中国当局は、新疆では人権侵害はないと一貫して主張している。また、ジェノサイドに関する欧米諸国の批判はその反中勢力の「下心である」と反論している。

人権侵害の裏付け

近年、中国当局によるウイグル人住民の人権侵害に関して、膨大なデータや生存者の証言が次々と出ている。

RFAウイグル語版は2017年から、新疆の「再教育キャンプ」と呼ばれている強制収容施設の多くの関係者に取材を行ってきた。

2018年、ゼンツ氏は一連の中国政府の入札文書と予算資料を基に、中国当局が「テロとの闘い」の名目で、新疆で数々の「再教育キャンプ」を建設したことを明らかにした。同氏はそれらの施設の中に100万人に近いウイグル人や他の少数民族の住民が収容されていると推測した。

また、2019年、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)などが中国当局の極秘文書「チャイナ・ケーブル(The China Cables)」を入手した。極秘文書は、再教育キャンプの運営や仕組みなどについて詳細に記している。

2020年、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は衛星写真の分析を中心とした調査報告書を公表した。17年以降、新疆では少なくとも380カ所の再教育・拘束施設が新設あるいは拡張されたと報告書は指摘した。

同年、ゼンツ氏は別の報告書のなかで、当局の少数民族に対する人口抑制政策の下で、ウイグル人女性は不明な薬物を強制的に注射され、また避妊リング(IUD)や不妊手術による産児制限措置を受けたと指摘した。

同氏が公式データを整理した結果、ウイグル人が多く住む都市のカシュガル市とホータン市の人口増加率は2015~18年の間に84%も急落し、19年にはさらに低下しているという。しかし一方で、漢民族の人口増加率の下げ幅は19.7%にとどまった。

2021年、英BBCとゼンツ氏は中国政府高官の間で回覧されている中国南開大学による報告書を取得した。これによれば、中国当局は「貧困脱却」と称して、数多くのウイグル人住民を新疆から他の地方に強制的に送り込み、働かせているという。

今年3月、米国と欧州連合(EU)、英国、カナダ、ニュージーランドは同じ週に新疆の人権問題に関する非難声明を発表し、新疆ウイグル自治区の当局者らに制裁を科すと表明した。新疆の人権問題をめぐって、複数の国が協力して中国当局者に制裁を発動するのはこれが初めてである。

(翻訳編集・李凌)

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