( jazzman / PIXTA)

いま人気の「低炭水化物ダイエット」その効果とリスクは?

「低炭水化物ダイエット」は、ここ数年、体重を減らしたい人や糖尿病の療養中の人に人気があります。

低炭水化物(Low-carb)の食事を中心とするこのダイエット法は、低糖質ダイエットとも呼ばれ、精製された炭水化物を制限し、タンパク質や良質な脂肪を含む食品を多く摂ることで、健康維持と減量の両方を達成しようとするものです。

脂肪を多く摂って「血管や心臓は大丈夫?」

そこで、脂肪や高タンパクの摂取が心臓に影響を与えるかどうかについて、よく疑問の声が上がります。最新の研究によると、答えは概ね肯定的で、「低炭水化物食」は心臓の健康にも役立つとされています。

炭水化物の摂取量は、通常の食事で約50%~60%であるのに対し、低炭水化物食では約20%未満であり、残りはタンパク質および脂肪が中心になります。

低炭水化物ダイエットは長い間、非常に人気のあるダイエット方法でした。しかし、低炭水化物食では通常、肉やバターなどの飽和脂肪を大量に摂取するため、心臓発作のリスクが高まることを懸念して、一部の医師や栄養の専門家は推奨しなかったのです。

しかしこの新しい研究結果は、もしもあなたが体重過多のグループに属している場合、低炭水化物と高脂肪の食事パターンは、心臓血管の健康に有益かもしれないことを示しています。この研究は、従来の研究のなかで規模が最も大きく、最も厳格に実施された実験の一つでもあります。

米紙ウォールストリート・ジャーナル『ニューヨークタイムズ』によると、この研究結果は『アメリカ臨床栄養学雑誌』 (American Journal of Clinical Nutrition)で発表されました。

「これは重要な研究です」と語るのは、マサチューセッツ州タフツ大学の栄養科学政策学部長で、心臓専門医でもあるダリッシュ・モザファリアン博士です。

しかし、同博士はまた、「摂取する脂肪の種類と食事のバランスも重要です」と強調しています。

ダイエットにも、糖尿病治療にも有効

人体が必要とするエネルギー(カロリー)は、主に炭水化物、タンパク質、脂肪の3つの物質に由来します。この調査研究では、参加者は過体重および肥満の164人の成人(その大部分は女性)でした。

まずこの調査対象を、摂取する全カロリーのうち20%、40%、60%を炭水化物から摂取する3群に分類します。タンパク質摂取量は全てのグループで同じようにし、その値は総カロリーの20%で安定させます。残りのカロリーは脂肪由来のものとします。

研究者たちは、それぞれのグループに実用的かつ健康的な食事を考案しました。参加者全員が食べたのは、野菜つきの目玉焼き、黒豆とチキンのタコス、ロンドン風のロースト肉、ベジタリアン用の香辛料、カリフラワーのスープ、ベイクドミールのサラダ、サーモンのグリルなどです。

炭水化物60%のグループが食べた主食は、全粒粉パン、玄米、雑穀のイングリッシュマフィン、イチゴジャム、パスタ、スキムミルク、バニラヨーグルトなどです。

炭水化物20%グループのメニューには、パン、ご飯、フルーツジャム、砂糖入りヨーグルトが出されません。その代わり、全脂牛乳、クリーム、バター、アボカド、オリーブ油、アーモンド、ピーナッツ、クルミ、オーストラリアンナッツ、柔らかいチーズなど、脂肪分の多い食事をします。

5か月後、低炭水化物食である「20%グループ」については、血中コレステロール値に懸念される変化は見られませんでした。

脂質の多い食品を食べましたが、脂質が血漿中に存在する様態であるリポタンパク質 の濃度は約15%低下しており、これは心臓発作のリスクが低下したことを意味しています。

また、この調査のなかの一つのミッションとして設定された「2型糖尿病に関連する低炭水化物食のグループ」でも、顕著な改善が見られました。リポタンパク質インスリン抵抗性指数(LPIR)は、インスリン抵抗性を測る指標であり、高いLPIRスコアは糖尿病になりやすいことを意味しています。この研究では、低炭水化物ダイエットの「20%グループ」でLPIRが15%低下し、糖尿病のリスクが低下したことを確認しました。

高炭水化物食の「60%グループ」では10%上昇しました。中程度の炭水化物ダイエットの「40%グループ」では LPIR指数に変化は見られませんでした。

 

「加工精製された炭水化物」を避ける

この研究で採用された低炭水化物ダイエットでは、高度に精製加工された糖質を含む食品はほとんど排除されましたが、未加工の果物、野菜、豆類、種子、その他の植物全体から「高品質」炭水化物を摂取しています。

この研究の発案者であり、ハーバード医学院の内分泌学者であるデイビッド・ルドヴィック博士は、「重要なのは、加工された炭水化物の摂取を避けることです」と語り、加工された各種の炭水化物製品が、現在の食品供給における最も不健康な側面の1つであると指摘しました。

投資額1200万ドルのこの大規模研究は、主に「Nutrition Science Initiative(栄養科学イニシアチブ)」の非営利研究組織が援助し、米国国家衛生院、ニューバランス基金その他の機関も援助しています。

 

(翻訳編集・鳥飼聡)

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